* 身近に熱視線 *












――平成××年4月18日 湿度は低い

からっとした空気の中の昼休み。



平穏の中お弁当を食べ始めようとするに叫びつく。


!」

「んー?」


スプーンを加えたまま返事をし、

お弁当箱の蓋を開ける

私はその机にどんと自分の弁当箱を置くと、

わざと怒ったような口調になって詰め寄った。


「今日あたしとあの人が喋ってる時、目で合図送ってきたでしょ〜…」

「あの人って誰?はっきり言ってくれないとちゃま分かんなーい」


しらばっくれた喋り方をする

私は耳元で声にならない息のような音で叫ぶ。


「大石君のことに決まってるでしょ!」

「あーあ。あの人ってその人ね」


分かってる癖に!

と言おうとした時。


「もしかしたら菊丸英二くんかなーとか思っちゃってさ」

「え、英二?」


首を傾ける私に、はにっと笑った。


「いっつも楽しそうに話してんじゃん?昨日もなんか恋人同士っぽかったしー」

「あっ、あれは英二が勝手に寄り掛かってきて…!」

「名前で呼び合ってるって時点で特別でしょ」


ビシ、とが私をスプーンで指した。

私は何も言い返せず口をつぐむ。

向こうは、ふう、と溜息を吐いた。

その行動がなんだか憎くて、私は口をもごもごと動かして喋った。


「だって、英二がなつっこくてそういう性格で…名前で呼んでくるからこっちも…」

「あー、やっぱり向こうが先なのね」


私が言葉の途中にも関わらず、は割って入った。

菊丸くんも苦労するねー、とか呟いてたけど、

なんのことやらさっぱり。


「おお…じゃなかった、あの人に視線を注ぐのもいいけどさ」

「む?」


はご飯をごくんと飲み込むと、

不敵な笑みを浮かべて言った。



「意外と、身近からもっと熱い視線が向かってきてたりするかもよ?」



……やっぱり、意味は分からなかった。

私は、はぁ…としか返事が出来なかった。


身近から熱い視線?誰よ?

私と英二が恋人同士に見えたって?

だから妬まれているとでもいうの?有り得る。


それともちょっと待って。

もしかして、が言いたいのは…。


「あ、そういうことか!あっははー」

「な…なによ」

「それはないから大丈夫!うん」


きっとは、英二が私のこと好きだとか言いたいに違いない。

そんなこと有りません。

英二とは去年から仲良いけど。

男友達に女友達。親友で有りクラスメイト。

本当にそれだけなんだって。


「余分な心配はご無用です!」

「なんでそう言い切れるの?」

「………」


まあ、根拠はないけれど。

でも妙に自信に満ち溢れた確信があるの。


「とりあえず今は、自分のことに精一杯だから!」

「あー、ハイハイ」


半分投げやりに呟くと、

はお弁当を片付け始めた。


早いな、と一言洩らして、

私はふりかけの掛かったご飯を頬張った。






















勘違いっぷり発揮。そして友が女版不二様みたいです。笑。


2003/09/23