* 写真に収めて *
――平成×△年3月29日 昼
一時帰国から持ち返った物の整理中。
スーツケースの中から出てくる沢山の品。
どれもこれもが母国の地を思わせるもので、懐かしい。
あ、お母さんこんな本買ったんだ。
このお菓子は、きっと日本でしか売ってないよね。
色々、イロイロ。
「、日本で取った写真の現像」
「あ、はいはい」
差し出されたのは大きい封筒。
中には写真が入っていて少し厚い。
さて、開封っと……!?
「ぽぎゃ!」
「なんだよ、五月蝿い子だね」
一番上にあった写真。
な、なんだこのラブラブなのは!?
……最後の日のブランコのか!!
「お母さま…?」
「ん?」
「中、やっぱり…見た、よね?」
「写真屋でまず確認する時に見せられたよ」
うぎゃぁぁぁ〜!!!
私は空の天辺から地面の底に落下するような感覚を覚えた。
何がまずいって、ほら、その、あれじゃん?
一応お母さんはシュウのことは知ってて
そりゃあ何度もうちにも来てるわけだしでもなんていうか
この 写真は ヤバイ 。
撮られている張本人が言うのだから間違いない。
使い捨てカメラでタイマー機能なんてないし、
周りに人なんて居そうにもないし。
だから、自分たちで撮ったんだ。腕伸ばして。
そんな訳で…
必要以上に顔の位置が近いよぅ!?
「わぎゃぁ!!」
「いいから早く片付けて頂戴」
「了解ですマザー」
一人喚く私を普通に流す母。
なんか色々と痛いんですけど?
「大切にしなよ」
「う?」
こっちを向いてお母さんは笑った。
「いい写真じゃない」
その言葉が、とても嬉しかった。
温かい言葉。有り難う。
大切にする。
この写真も。
この想いも。
思い出も、全部連れて。
一枚の写真に収められた、無限大のメッセージ。
一番大切なのはそれに写った張本人ってことなんですよね。
2003/09/22