* 泣かないで。 *












――平成××年7月25日 日本滞在最終日

クラスのみんなでカラオケにてお別れ会をしたところ。



「それじゃあ、これにてのお別れ会終了だね。解散!」


カラオケから出ると、声を上げる

ばらばらに散らばって行くクラスのみんな。


バイバイ。今までありがと。



「……解散って言ったのに残るねぇ」

「それはそうよ。帰り道一緒なんだから。途中まで一緒に行くわよ」

「勿論」


や、特に仲の良かった女子と固まって、

8人ぐらいでぞろぞろと歩く。

(男子はシュウ一人です。あしからず。)


色々と思い出した。

ここに居る女子は修学旅行で一緒だったメンバーだな、とか。

教室で交わした些細なお喋りとか。

楽しかった時間をいっぱい、イッパイ。


駅について、込み合った中から切符を買って。

電車に飛び乗って。

街が流れて、流れて。


時間はあっという間に過ぎた。



「それじゃあ、今度こそお別れかな」


帰り道が丁度いい具合に一人違う私。

駅から出て、歩道橋の前。

右に行こうとするみんな、上ろうとする私。


…向こうでも頑張ってね!」

「うん。ばっちりさ」

「手紙書いてね、ちゃん」

「おう。任せとけ。一年に一回は書く!」


少ないよ、と突っ込みが入って。

一年も経ったら一時帰国だよー、とか笑って。


なんか、足りない気がしたけど。



「それじゃ!」



笑顔を見せて、手を振って。

私は歩道橋に足を掛けた。

「送ってく」と、シュウが横についた。

そうして階段を数段上った時。



!」



――――……。



そうか、何か足りないもの。






「………」


俯いたまま動かない

その顔は見れない。


掛ける言葉が浮かばない。


ちゃん…」


誰かが呟いた。

は、俯いていた顔を…上げた。


「向こうでも頑張れよ!応援、してる…っ」

……!」


上げた顔は、明るい笑顔だったけど。

瞬時に涙を堪えた表情に変わった。


私は階段を駆け下りた。

そしてその体に抱き着いた。



例えばね、好きな男性のタイプは?って訊かれたら。

包み込んでくれるような好き、って答えると思う。

私、甘えん坊だからさ。


でもね、大切な親友は。

何があっても守ってあげたいと思うの。


独り善がりな強がりかもしれないけど。



震えている肩。

涙を堪えているのか、と気付いた。



泣かないで。

とは、言えない。


私も同じ状況だから。


声を出したら、溢れてきてしまいそうで。

全てが零れ落ちてしまいそうで。



だから、心の中でそっと。

私のためなんかに、泣いてくれて有り難う。



恋人や、家族からは離れて。


誰よりも大切だった人。






















時には愛情だけでなく友情も。


2003/09/21