* 歌いましょう *












――平成××年6月13日 音楽の授業中

ただいまはパートごとに分かれて練習中ですが。



さ〜ん?」

「―――」


寝ようとしてたのがパートリーダーのにバレた。


「何やってんのあんた!歌いなさい!!」

「うにゃ、眠いでおまするー…」

「ふざけてんじゃない!起きろ!!」


無理矢理立ち上がらせられる。

みんなも座って歌ってるのになんで私だけ。


「ほら、みんなも立って歌うよ。目指せ、体育祭から2連覇!」

「「おう!!」」


みんなもやる気。

そう、今は合唱コンの歌の練習中。

私はメロディーラインのソプラノに居るわけですけれど。


「……ぷしゅぅ〜」

「あ、コラ!座るな!寝るな!!」

「本日半徹で眠いのですよ…」


半徹、とは半分徹夜の略ですが。


眠い。確かにそれも一つの理由。

だけど、私が歌いたがらない理由は別のところに。


「あたしが歌わなくても勝てるぐらいの根性で行こうよ」

「まあ、別にアンタに頼ってるわけじゃないけど…」


歌わないことに上手く理由を付けて、私は顔を伏せた。

寝ます。お休み。



「それじゃあパート練習そこまで!全員で合わせます」


…先生が丁度いいところで切り上げてくださった。



仕方無しに私も立ち上がる。

ピアノを囲んで列に並ぶ。


聞き慣れた伴奏が始まる。



歌いたくない。


ううん。



歌いたいんだ。




「………っ」



歌い始めたものの、私は顔を伏せた。

周りの皆は正面を見たまま歌い続けてた。


無理。

私にはこの歌、歌えないよ。


本番居ないのに、練習したって意味はない。


意味はないから歌わない?

違う。

その時自分がそこに居ることが出来ないのが悔しいんだ。



みんなの声、綺麗。

クラス全体が纏まってる。


凄い。だから体育祭も優勝できたんだって思える。

その中に自分が入っているっていうのが嬉しい。


もうすぐ、過去形に、なるのかな。



伴奏が終わって皆が動き出す前に、涙を乾かすのは大変だった。























まともに泣きそうになって焦った。


2003/09/20