* 分かってるよ *












――平成××年7月16日 お昼時

本日は何かと質問攻めにされているのですが。





「――」


後ろから掛けられた親友の声。

私は無言で振り返る。


「…何、

「話がある」


いつでも笑っているが、ちょっと眉を顰めてた。

……怒ってるのかな?

ちょっと不安になった。



屋上へやってきた。

時間帯の問題で込み合っているそこだけど、

人気の少ない端のほうへ私たちは向かった。


前を歩いていた

ぴたと足を止める。私も同じく。

背中を向けたまま、下を向いたまま、話を始めた。


「どうして今まで黙ってたの」

「……」


やっぱり、怒ってる。

そう感じた。

少し声が震えてる。

は感情が昂ぶると、すぐそうなるの、分かってる。


「あたしは…最後ギリギリまで、みんなと笑顔で居たかったから…」

「っ!」


牙を剥いたは、こっちを振り返った。

殴られでもするか、そう思って咄嗟に身構えたけど。


「……

「分かっ…てるよ。アンタがそういう性格、してるってことくらい……」


は、私の胸にしがみ付いて来た。

小刻みに揺れ動く肩。

そうか、震えてたのは、

怒ってたからじゃ、ないんだ。


は顔を起こした。


「でもさ、私たち…親友じゃん!相談してくれたって、いいのに」

「……ゴメン」


言うと、謝らないでよ、と私の胸を小突いた。


「ま、アンタらしいなって思ったけどね」


はくすぶった表情をしてたけど、

私は微笑みを返した。


「…ところで、大石にはもう伝えてあったんでしょ?」

「うん。昨日、だけど…」


ふぅ、とは溜息を吐いた。


「アンタのことを一番理解してるのは私だと思ってたけど、思い上がりかな」

「あ……」


ゴメン、と言いそうになったけど、

また繰り返す破目をくらいそうだから言わなかった。


「ま、でも…」

「?」


疑問符を浮かべる私に、は強い笑顔を見せて言った。


「そんなところも含めて、のことは全部分かってるつもりだからさ」


その言葉に、私はまた笑顔を返した。


はふっと鼻で笑うと、

くるりと方向転換をして呟き始めた。


「小3のとき、学校の中で迷子になって半泣きになってたなんてこと大石は知らないだろなー」

「ちょっ、!?」

「この前トイレ行こうとして間違えて掃除用具入れに入っちゃったことも、知らないでしょね」

「やぁだ、やめてよ!!」


あはは、とは声に出して笑った。


「ま、向こうは私が知らないを知ってるのかもしれないけど」

「……」

「でも、とりあえず私が居るってことも忘れないでね」


さあ行くよ、とは顎とで促した。

私は屋上のドアをくぐる。

太陽の光が遮断されていて、階段は少し暗かった。



私だって分かってるよ、

それなのに、こんな私でごめんね。

……ゴメン、ううん。


いつも笑顔で居てくれて、ありがとう。






















向こうは二つ分失った気分ですよね。辛いね。


2003/09/20