* 朝食はパンで *












――平成××年5月10日 7時49分

朝練がない日は、シュウがうちに迎えに来る。



家族にバレると恥ずかしいから、

私が指定の時間になると家を出る約束になってる。



 し か し 。



「お母さん、お弁当は!?」


二階から駆け下りると台所を駆けずり回る私。

お母さんは呆れた声で答える。


「あんたが購買でなんか買うって言ったんでしょ」

「あ、そうだ。じゃあお金ー!」

「全く、朝から忙しい子だね」


ごもっとも。

だって、約束の時間まで、あと一分しかないんだもん。



「それじゃ、行ってきますー!!」



ドタバタと、鏡を覗く余裕もなく玄関を飛び出した。


その先には。


「おはよう、


爽やかに立っているシュウが居た。


「どう、時間、セーフだった?」

「40秒遅刻」


腕時計を見ながらシュウはそう言って笑った。


「いいじゃん秒単位くらいー!」

「四捨五入すると1分」

「む……」


言い返せなくなった私を再び見やると、

冗談だよ、とシュウは笑った。


「とりあえず行こっ!」


くるりと方向転換した。

するとシュウは言う。


「あ……、朝食はご飯?」

「え、どうして分か……!」


私の頬に手を伸ばすと、シュウは何かを摘んだ。

そして微笑む。


「ほっぺにご飯粒」

「え……うぎゃぁっ!」


思わず呻き声を立てる。

シュウは声を上げて笑った。


「何それ、あたしってばこっぱずぅ!!」

「よっぽど急いでたんだろ」


…言い返せない。

全く、とんだ失態を演じてしまった。

ニコニコと意地らしく笑うシュウから、目を逸らした。



これからは朝ご飯はパンにしよう。

そう決めた。





















その後大石が米粒をどうしたのかで恥ずかし度が決まる。


2003/09/20