* 宿題教えて? *












――平成××年5月2日 朝

人々は一日の始まりをせわしく過ごす。



「シュウ〜〜〜!」


教室に飛び込む直前から既に叫び始めている私。

だって、貴方が朝早いことぐらい知ってるから。


「ん、どうした?」

「今日の一時間目、何だと思うよ!?」


後ろの黒板を確認して、シュウは呟く。


「……数学」

「といったら、宿題ってやつに決まってるでしょが!」


力む私。

言いたいことの予想が吐いたらしいシュウは溜息を吐いた。


「それじゃあ、のためにならないだろ?」

「じゃあシュウは、怒られるあたしを放っておこうって言うの!?」

「そうじゃなくて今からやれば…」

「だって分かんないんだもん!!」


威張って言う私。

シュウはまた溜息を吐く。


「…どこが分からなかったんだ」

「あは、全部v」

「………」


なんちゃってね。

本当は全部分かるんだけどね。

これでも私、数学が一番得意だったりするんだから。

でもね。


「いいか、ここがxだろ、つまり方程式に当てはめるとyは…」

「3分の4ね」

「…分かってるんじゃないか」

「いや、分かってない!!」


一生懸命説明してくれるシュウの横顔を見るのが好きだから。

だから、分からないフリをする。


「で、次はyの値が与えられてるから逆算して……ん?出来るか…?」

「うん。xを移行して一次方程式にするんでしょ」

「……お前、俺より分かってるんじゃないのか」

「何を言いますか!」


もしかすると、ただね、一緒に居られればいいのかもしれない。

だったら普通にお喋りでもしてればいいのに。

でも違う。


考えるときに顎に手を持ってくる癖とか。

ちょっと眉間に皺寄せる表情とか。

真剣そのものの横顔が、なんだかカッコよく見えて。


「…お前、考える気あるのか?」

「大有りですとも!次の問題の答えはx=3でその次はx=5,y=1/2でしょ?」

「……やっぱり分かってるんじゃないのか」

「何をおっしゃいますか!!」



こんな瞬間が、好き。






















なかなか策士です。


2003/09/19