* そのぬくもり *












――平成××年6月16日 日曜日

公園の隅のブランコに私たち二人。






「ん?」


キコキコと鳴らしながら小刻みに足を振る。

ブランコは大きく揺れず、同じ場所を前後する。


シュウは軽く息を吐いてから、訊いてきた。


「最近、おかしくないか?」

「そんなことないよ」


即答しました。

嘘なんだけどね。


隠し事するの、苦手なんだよね、私。


「本当に何もないのか?隠し事はなしだろ」

「してないって!心配性だな、シュウは」


空元気。

笑顔を作る私。


気付かれたかな。

向こうは眉を顰めて訊いてきた。


「本当に、大丈夫なのか?」

「うん。全然平気だよ」


答えると、向こうはしかめっ面をした。



「無理するな」



…………。


命令調で言われたらさ、

どうしようもないじゃん。


でもダメだ。



「ごめん。今は話せない」

…」

「もう少ししたら絶対伝える。伝えることに、なるから…」


喉の奥が痛い。

涙が出そうな時、こうなる。



「だからちょっと待って」



言うと、向こうは無言で抱き締めてきた。

胸に私は顔を埋めた。


上から降ってくる声。


「一人で抱え込むなよ」

「それはシュウの得意分野でしょ」

「まあそうだけど…」


茶々を入れる私に、言葉を一度区切ってから。



「何があっても、俺はお前の傍にいるから」



…ありがとう、とは、

言えなかった。



貴方のその温かい胸の中、

目から零れる温かい滴を堪えるので精一杯。



溶け込みたいと思った。






















隠したくても隠し切れないこともあるわけさ。


2003/09/18