* いつか言える *












――平成××年6月13日 沈黙

教室の隅の私たち二人。



「………」


思いっきり正面から見つめる私。

余りに長い時間凝視し続けるものだから、

さすがに向こうも不信感を覚えた。


「…どうしたんだ、


戸惑いが混じったその顔。

私は、溜息を吐いて顔を逸らした。


「ゴメン、なんでもない」

「そうか……?」

「ん」


喉の奥で返事する。

向こうは、不思議そうな心配そうな顔でこっちを見てくる。

敢えて視線を合わさない。


合わせたら、涙を堪えられなくなりそうで。

全てをぶちまけてしまいたくなりそうで。

それはまだ、きっと耐えられないから。お互い。


だから、今はちょっと我慢する。


「何かあったら、ちゃんと言ってくれよ?」

「分かってるって。そっちこそね」

「もう喧嘩は散々だよ…」


二週間ほど前の出来事を思い出す。

苦い顔をするシュウ。

歯を剥き出して笑う私。


上手く話題を逸らすことに成功しました。

さすが私の得意分野。



ごめんね、シュウ。

約束破りで。

自分ばっかり全てを隠して。


だけど、もう少し待ってね。


きっと、伝えられる日が来るから。

伝えなきゃいけない日が来るから。



それまで、もう少し待っててね。






















出来れば伝えたくないよね。


2003/09/17