* Sun Salto *












空が青い。








「あ、向日発見」






呼び掛けられた声に下を見る。

クラスの女子だ。



「お、じゃねぇ」

「ねっ、あたしも上行っていい?」



訊かれたから、手の仕草で促した。






屋上の入り口の上。

3mぐらいの高さのそこ。


きっと、学校の中では一番高い場所だ。





空に一番近いはず。







「今日、いい天気だね」

「ああ」



梯子をよじ登ってきたに手を貸した。


ありがと、というとオレの隣に座った。




「なんでこんなところに居たの」

「お前こそなんで来たんだよ」

「ん?」



はちょっと笑って訊き返して。


空を見上げながら言ってきた。




「吸い込まれちゃいそうなくらい綺麗な青だなって」




オレはその横顔を見てた。



なんか、コイツっていい奴じゃん?

気が合うかも。そう思った。




「太陽も燦々と明るいし!」

「…それってシャレ?」

「へ?」

「太陽が、さんさん…サン……」



……冷めた。




「…悪ぃ」


「いや、別に……」



なんともいえない空気だ。くそくそ。

(せめて、「つまらないよ!」とか言ってほしい。その方が気が楽だ)



と思ったら。





「ああ、そうか!サンって英語のsunのことね!あははっ!!」




…遅いながらに返事が返ってきた。

コイツって、面白い奴かもしれないけど…変だ。



「面白かったか?」

「うん」



ここまではっきりと答えられるとは…。

(本当にヘンな奴なんだな、コイツ)





空を見上げた。



辺りでは一番高いそこ。

見上げたら周りには何も見えない。


建物も。

木々も。

何も視界に入らない。




見えるのは、青い空だけ。





「こうしてるとさ…そのまま空に飛んでいけるような気分にならねぇ?」


「同感」





鳥とかだったら、青空も簡単にピューっと飛んでっちまうんだろうな。

さすがにそれはオレにも無理だ。


翼があれば、もっと高く飛べるはず。




「一瞬で良いから、空を飛んでみたいって思わない?」




言われて、横を見た。

は笑ってた。


オレも笑い返した。




「だよな。ちょっと、挑戦してみるか?」


「え?」





不思議そうな顔。


後を見届ける前に、正面を見据えた。




立ち上がる。



空が更に近くなる。











「向日岳人、飛びます」











宣言した。



地を蹴る。




思いっきり高く。




高く高く、跳び上がった。











空だけに包まれる感覚。


周りには何も見えない。


まるで羽が生えているような気分。




太陽に照らされて。


高く宙を舞った。




随分長い時間飛んでた気がした。















「凄い向日!本当に飛んでるよ………ありゃ?」





その言葉、オレの耳には入ってない。



が下を覗き込んできたのは、きっとドスンという音を聞いてだ。


オレとしたことが…。

飛ぶことばかりに気を取られて着地のことを全く考えていなかった。



着地失敗。

顔面落下。




「きゃー!向日ぃー!」


「〜〜〜〜〜」




これが、鼻も折れる失態ってやつだ。

(実際は折れていないことを祈ろう)

(オレは数時間後に目を覚ますことになる。幸いかすり傷のみ。身軽で良かった)




でも、少し近付けた気がした。







空の中には、自分と太陽だけ。


一瞬だけど、高く高く飛べた。



背中には、羽が生えているようにさえ感じられたんだ。






















本当は語尾をDA!にしたかった…。(マテ)
そんな訳で、BGMはDA・DA・DAで宜しく。
題名はサンサルト。私のイメージはこれです。
三日月のようなムーンサルトに対し、
全てを投げ出して大きく飛び立つ…駄目?(汗)
(てか、あんまりテニスの技としては使えないね)

あんまり誕生日に関係ない内容だけど。
お誕生日おめでと、がっきゅん。


2003/09/11