* 幸せの形を発見し隊 *












最近、桃の様子がどこかオカシイ。

なんか、元気無い。


「桃城さんちの武くん〜♪このごろ少しヘンよ〜」
「あぁ?」

「どうしたのかな?」


机に突っ伏してる桃まで歌いながら近付いて、
指を来るんと回しながら歌の調子を上げて立ち止まった。

軽いギャグを咬ましたつもりが…向こうは目線を逸らすとまた突っ伏した。


「おい桃、シカトは良くないだろ」
「うるせぇな。オレは今機嫌が悪いんだよ」


機嫌が悪い。

思いつく原因といえば、まあ……。


「海堂か」
「っ!?なんで分かんだてめぇ!」
「あら、ビンゴ☆?」

桃はばつが悪そうに眉を潜めた。
そんな顔すんなよ。面白いじゃんか。


「なんだよ…茶化しにきただけなら帰れよ」
「冷たいなぁ。折角相談に乗ってやろうと思ってんのによ」

んなもんいらん、と言うと桃はシッシッと手を払うようにした。



「…これは重症だな」



小さく呟いた俺は、2年7組まで走った。



そして今、


「……なんだ貴様は」

「まあ、いいだろ別に」


海堂の前に居る。



こんなことしてるって知ったら、桃怒るかな?
まあ、いいだろ。


「ねぇ海堂くん」
「…んだよ、気色悪ぃ」
「まあまあ」

どうどう、と制す。
全く、コイツの扱いは難しい。

下手なこというこというと怒るから?
いや、違う。


下手なこというと赤面しだすからだ。(キッパリ)


普段はフシューとか言ってるくせに。
頼むぜホント。

まあ、実はそれを楽しんでたりするんだけど、
そういうこというと本気でキレだしかねないから秘密だ。


「最近さ」
「……」

「桃と何かあった?」
「っ――」


固まった。
分かりやすいと言えば分かりやすい。

本当にこいつら二人とも・・・だよな。
(詳しいことは突っ込まないでくれ)


「それで、何があったの」
「な、何もねぇよ」

嘘を言え。
その妙に焦った態度でバレバレなんだよ。(面白すぎる)


「さては…一夏の経験が故に…」
「そんなんじゃねぇ!ただ…」


「(にぱっv)」

「あ」


がたっと立ち上がった海堂には、
教室中の視線が注目していた。(いいざまだ)


「ただ…何?(ニヤニヤ)」
「……っ!何でもねぇ!!」

食べかけの弁当も広げたまま、
海堂は教室から消えた。


「全く、これだから・・・は困るよな。卵焼き頂きっ」



2−7を後にした。









桃と海堂が付き合い始めたのは、
多分1ヶ月ぐらい前。
というか、俺が無理矢理くっつけたに近い。
だって、見ててじれったくてよ、あの二人。

それ以来上手くやってる思ってたんだけど…。


「そうでもないのかねぇ…」


これは……
なんとも面白そうだ。


深追いすることに決めた。







まず、桃を追ってみる。


今日の昼食、弁当に購買のパン2つ…。

明らかに少ない!
これは大問題だ。

ちなみに溜息は16回目を観測した…。
これは完全にヤバイだろ。


てか、俺今自分の行動が某先輩に似ている気がしてならない…。(なんてことだ)





次は、海堂を追ってみる。

…と思ったら、さっき教室から消えて以来見当たらない。



うーん。
どうしたものか。





ところで、なんで俺ここまで頑張ってんだろな。
面白いから二人の行く末が気になるってのもあるけど。


やっぱ、な。







2−8へ帰ってきた。


「桃」
「……なんだお前かよ」

重そうに首を擡げる桃。
俺の顔を確認するとまた下ろした。

「その言い方はないんじゃないか?それとも、海堂くんが来るとでも思った?」
「そんなんじゃねぇよ…」


…沈んでます。完璧だ。


「桃、何か相談に乗れることがあったらいくらでも聞くぜ?」

柄にもなく俺までもが真面目な顔になってしまう。
でも、桃はこう言った。


「これは…お前が入ってくる話じゃない。
 俺と、アイツだけの問題だから」

「……そっか」



じゃ、頑張れよ。

そう一言残して俺は部屋を出た。


いつもだったら茶化して通り過ぎている場面。
それが出来なかったのは、何故?


 俺とアイツだけ。


その言葉には、何だかんだいって信頼のようなものが感じられて。



「俺が入る問題じゃ、ねぇんだよな」



………。

なんて、沈む俺でもねぇけどな。



「…あ!」



廊下の窓からふと外を見てみたならば。

海堂発見。
裏庭で素振りなんてやってやがった。


「(アイツ練習熱心だからな……あ゙!?)」


横には乾先輩。

……なんかオチが見えた気がする。




教室へ再び走る。


「桃!」
「今度はなんだよ…」

疲れた態度を見せる桃に、単刀直入に訊いた。


「原因って、乾先輩?」


暫くの沈黙の後、桃は爆発した。


「ああそうだよ。どうせ俺のつまらない嫉妬だよ!
 俺がいくら誘ってもアイツは素っ気無いくせに乾先輩の練習には
 簡単にほいっとついてくんだよ。そのお陰で休み時間は碌に喋れねーし
 だからといって普段も一緒に居てくれるわけでもねーし!」

言い終わった後、あ、と固まっていた桃だけど。
上手く全部吐いてくれた。

なるほど。そんな理由だったわけね。


海堂に理由を聞いてみようものなら、
お前はテニスが上手くなりたくねぇのかとか
貴様こそ登下校が越前と一緒じゃねぇかとか、
そんな返事が来るに決まっている。



…ただの痴話喧嘩ですか。




「なーんだよ、そんなこと俺に相談してくれれば一発解決☆だったのに」
「ホントかよ…」
「そうだよ。お前ら誰様のお陰でくっついたと思ってんだ」
「う……」


突然静かになる桃の背中をバシバシと叩いた。
思いっきり力を込めてそうしないと、
何故かやりきれない気がして。

こんなお気楽な俺だけど。



「まずさ、相手の好きなものも愛することから始めようぜ」
「そりゃあ、俺だってテニス好きだけどよ…」
「じゃあテニスをやってる海堂は?」

桃は固まった。

「ま、そういうことだよ。分かるだろ?」
「なんか分かったかも…」

俺は笑った。


「相手の幸せを願うのも、一つの愛の形だぜ」


ちょっとキザだったかな、なんつって。

でもその言葉。
言い聞かせてるんじゃ、ないのかな。



「うん…それもそうだよな。サンキュー、林」
「どう致しまして」


チャイムが鳴って、授業が始まって。

チャイムが鳴って、授業が終わって。


HRも終わって、部活が始まって。




俺は2つの笑顔を見ることになった。






まずは、相手の好きなものも愛すること。


相手の幸せを願うのも、一つの愛の形。





それが、俺のシアワセ。






















188188HITリクのリンモモ小説でした。
む、難しかった…意外に。
ギャグなんだか切ない系だか微妙なラインにしたつもり。
いや、それほどギャグでもなかったか。
なんか尻切れトンボの気がしてならない。むぅ。

微妙なキャラです、林。
てか、リン。(何:既にオリキャラ化してるよ)

題名についての突っ込みは禁止です。

壮真さんに捧げます。有り難う御座いました。
そしてフルーツコンビに真ん中BDおめでとう。


2003/09/06