* 夢のありか *

 〜go down in the dark〜












怖いから。
本当はとても弱いから。



だから強くなりたがる。






ギシギシと響くベッドの上。

親愛なる人の腕の下。


「…あっ、桃、センパ……」

「あ、悪ぃ」


身体が危うく離されそうになる。

腕を掴む。


「……離せよ」

「ヤダ」


俺の我儘なんて、いつものこと。


桃先輩は溜息を吐いた。

軽く腕を剥がすと結局俺の中から出た。


妙な気だるさだけが残って、額の汗を拭った。


「お前はいつでも無理しすぎだ」

「……」



言われなくたって分かってる、そんなこと。

無茶なんて、俺の専売特許のうちの一つ。


いつものこと、そんなの。

今に始まったことじゃない。

どうしてそんなに特別扱いする。


「…いいから続けようよ」

「無理すんなって、その身体で」


宛がわれた視線は、俺の膝に。

試合でつけられた傷だ。


自分で見ると、憎悪の念が滲んでくる。


向こうにじゃない。

自分に。



「あの試合だって…本当はもっと簡単に勝てたはず」

「ああ」


強がり。



「俺は悪くない。向こうが悪い」

「…かもな」


嘘。




全部嘘。


桃先輩もそれは分かってる。



だけど止められない。

傷付くのが、怖い。




「俺は何も、してない……っ」



滲んだ涙は、目を大きく広げたら薄まった。

だけど瞬きしたら、目の端が少し濡れた。


「…分かってるよ」


そっと包み込んでくる腕。


「本当に?」

「ああ」


「…嘘吐き」

「バレた?」


笑う顔。

その顔が明るければ明るいほど、泣きたくなる。




「お前は良くやったよ」





違う。

欲しかったのはそんな言葉じゃない。




お前は駄目だと。


否定してほしい。

存在そのものごと。



自分は強がっているだけなのだと。

本当は強くも偉くもなんともない。




認める言葉を聞くほど弱くなるから。


言ってほしくない、そんな言葉。



だって、本当にまだまだなのは、自分のほうなのに。





「桃先輩…」

「…ああ」



伸ばした腕。

向こうから寄ってきた。

肩に指が触れて、首に腕を回す。


その先にあるものは、自分しか見つけられない。






暗い闇の中。

少しだけ。

あと一歩、そしてもう一歩踏み出せば。


何かに届く気がした。




闇にも夢にも、手が届く気がした。





















リョーマVS赤也戦を見て。
なんとなーく閃いた。
突然英語で喋りだすから焦ったよ、ホント。

これ書いてる今はまだ試合終わってないんですけど。(汗)
勝っても負けても引き分けでも途中で終わっても
大丈夫なように書いた…つもり。
でも、なにかトラブルが起こることには期待している。笑。
(だって、今のところリョーマって赤也くんに何かしてます?してないでしょ?)
(まあ、しないで終わった場合は、ただたんに怪我に対して怒ってるってことで/何)

久方ぶりに歌詞創作です。
なんだか暗い話になってすみません。汗。
あのね、ヤミを50音表で下に2マス分ずらすと、
ユメになるの。そのことに気付いたから使ってみたくて。
闇を越えてこそ夢を掴めるってこと。
夢のありかは闇の向こう。御粗末。


2003/09/04