* 周遊輪廻 *












 貴方が好き。

 貴方が好き。

 いつでも笑顔の貴方が好き。


 貴方が好き。

 貴方が好き。

 例えまやかしだとしても。








「綺麗だね」

「えぇ」



指同士が絡められることはなく、

ただ重ねられただけの掌が温かい。

その温もりを感じながら首を持て上ぐ。


見上げた空はどこまでも遠い。




遮るものなど何もない。

それでも星が瞬くのは、宇宙に漂う塵が故。


大きく息を吸う。

肺の奥底までもが涼しさに侵される。

吐き切るまで肩を撫で下ろしてから、

小さく吸って、言った。



「タカさん」

「…何?」



自然と手に力が篭る。


声が震えていたのは、力が篭った所為。

少し掠れていたのは、さっきの深呼吸があまりに深すぎた所為。


きっと、それだけのこと。



「私は、貴方のことが…好きだけれど」

「うん…」

「とてもとても、好きだけれど…」

「………」



向こうが黙ると、言葉に詰まる。

いつも相槌を打っていた貴方が、

そのまま消えてしまいそうで。



「でも…それ、でも……」


敢えて視線を合わさなかったのに。

連なる星たちを仰いでいたのに。



「分かっているよ」



離された手と、引き寄せられた肩。

顔を上げることすらままならず、そのまま俯いた。


だから、知らない。


空の上、遥か彼方の銀河の果て、星が尾を引き流れたこと。

それと同時に頬を伝った自分の何かのこと。


真実は、誰も知らなくていい。




「本当は、行ってほしくはございません…」

「でも、決まったことだから」

「…分かっています」



暖かな雫は埋めた胸の奥に消えた。

すっと顔を上げれば、凛とした貴方がそこに居る。


視線が合わさる。


その時は、どちらからともなく、

口付けを、交わしていた。



これは別れの挨拶。

忍び逢いは終わりという誓い。


たったそれだけのもの。



切なさは感じなくていい。

感じるのは別れの侘しさだけ。


愛しさは感じなくていい。

感じるのは小さな罪意識だけ。



それが故にも流れたものは、

泪と認めざるを得ない。




気付かないで。

気付いても気付かないふりをして。




真実なんて、どこにもないのだから。








 貴方が好き。

 貴方が好き。

 まやかしだったと言われても。


 貴方が好き。

 貴方が好き。

 真実を知るものなんて居ないから。






   まやかしでもいい



     真実の愛だったと 伝えたかった






















タカ不二?不二タカ?まあとりあえずこの二人で。
相変わらず不憫なのは塚さんなんですがまあいい。(ぇ

イメージソング大有りです。
「この歌って不二タカっぽいよね」という話になって。
この二人大好きです。白くほのぼのもありだけど、
切ない系の微悲恋が良く似合う…気がする。

書いてて楽しかったです。
不二の言葉遣いとか謎なんですがまあいい。

『蹴鞠-Syukiku-』のアナザーストーリーのはずが
こっちが先に書きあがっちゃった。(笑)


2003/08/15