* positive gratitude *












 ――離れていても近くに在ると、そう感じるときがある。




「………」


目を開けて、気付く。
そうか、今日も夢だったのか…と。
夢の中のアイツの笑顔は、無意識から生まれた幻影なのだと。

自分では分かっているつもりでも、未だに疑うときがある。

アイツが引っ越したという事実自体、夢なのではないかと。
ぱっと目を開けば、そこには本当の世界があって。


いつでも二人一緒だった頃の、世界。


しかしいくら願おうと、今この状況が現実であり、
目の前で笑ったあの顔こそがまやかしなのだと。

元気にしてるか?
無理はしていないか?
楽しくやれているか?

疑問や不安ばかりが募る。

そういう自分は、向こうに同じ質問をされたとしたらどうするだろう。
まさか、「お前の所為で胃が痛いことが増えたよ」なんて、
本人に面と向かって言えるはずも無い。
結局、作り笑いで誤魔化すしかないか。

そうしたら、お前はどうするだろうか。

笑い返してくれるだろうか。
作り笑いなんてやめてよ、と言うかもしれない。
逆に俺のほうが「無理しないでね」なんて言われてしまうかもしれない。
真実は定かではないが。

でも、それでも俺たちは一つの世界の中に居る。一つの空の下に居る。


・・・・・・。

無理しないでね。そう言われたら、俺はどうするだろうか。

してないよ。…嘘だ、と言われそうだ。
お前もな。…妥当な返事だ。

でも――。


俺はきっと、「ありがとう」と返すと思う。


辛い思いをしても、その心を癒してくれるのも、またお前だから。

一生会えないわけではない。
たまにはこっちにも帰ってくるし。
いつかまたここに完全に帰ってくるという話も聞いた。


だから、―――それまでは。

例えまやかしだとしても、夢の中で見せたその表情を信じることにする。



 住む場所は離れていても、笑顔はすぐ近くに在る。


  そう、感じることがあるんだ―――。






















陽様にドイツ一周年を祝っていただいたお返し。
勝手ながら設定合わさせていただきました。
題名もこっそり絡めてたり。ちょっとした悪戯。

別にこれ、大石じゃなくてもいいんだけど。
(名前も出てないし喋り口調も特に癖無く中性だし)
でもま、お互い大石好きだったから、ってことで。(笑)


2003/07/28