* yellow mellow *
肩を寄せ合って座るベンチ。
見上げた空は不思議なほどに青い。
差し込んでくる陽光は、目を開くのが困難なほどに眩しい。
「…大石」
「ん?」
腕を顔の前に掲げながら話す。
そうしていなければならないほどに、眩しい。
「太陽って、何色だと思う?」
訊いた後、暫く返事が来なかった。
大石のことだから、いい加減な返事はしたくなかったんだと思う。
ちらりと横を見ると、顎に手を当てて考え込んでいた様子だった。
目が合うと、大石は眉を顰めた。
「うーん、難しいな」
「そんな深く考え込まないで、思ったことを率直に言ってよ」
「イメージだと…黄色かな」
大石は笑いながら言った。
黄色。
確かに、太陽というとイメージ的に黄色だ。
小さい頃に書いた絵なんかを見ると、
必ず青い空の中に白い雲と黄色い太陽が浮かんでる。
でもどうして?
「実際は…赤かオレンジだよね」
「ああ。教科書とかで見るとな」
「ここからは…白く見える」
「うん。なんでだろうな」
なんだか不思議。
白い太陽を描いた絵なんて、見たことがない。
この目で黄色い太陽なんて、見たことがない。
でも描かれるのは、黄色なんだ。
「温かいから…かなぁ」
「え?」
「こうやってお日様の下に居ると…温かいじゃない?」
一瞬太陽を見上げる。
強い光に反射的に目を閉じる。
残像が見えて、僕はそのまま瞼を伏せていた。
「この適度な温かさがさ、黄色って感じ」
「…分かるような気もするな」
言いながら大石は軽く笑った。
大石のこの笑顔が、スキ。
「大石のイメージもね、黄色って感じ」
「えっ?」
「何でだろ。卵って感じだからかなぁ」
「こら」
軽く額を小突かれる。
くすくす笑いながら僕は目を開けた。
大石の方を向き直ると、
軽く膨れた顔が見えた。
大石のこんな表情が、スキ。
「冗談だよ」
笑いながら否定して、体を寄せる。
大石も、太陽も、同じ。
同じ温かさがある。
優しく包み込んでくれる、温かさ。
どうみても不二視点の大不二なんですが。
2003/07/24