それは、夏休みに入って数日した時のことだ。


「なあ海堂」
「あぁ?」
「今日何の日か知ってるか?」
「………?」

頭の回りにハテナマークが見える。
まあ、特に教えたこともないし分からないのも当たり前かな。

「今日、オレの誕生日なんだ」
「……おぉ」

海堂は少し驚いた風な表情になった。
そりゃあ、当日に突然言ったら驚くかね?
だけど、事前に言っとくのもあれかと思って。

「なんか、自分の誕生日が来ると、あー夏休みだなーって思う」
「………」
「もうオレ達が知り合って1年と3ヶ月だぜ?早いもんだな」

しかし…やっとそんなもんか、という気持ちもなくはない。
長いんだか短いんだか。

目を閉じると、入学したての頃の状況が瞼の裏に浮かんでくる。

「オレがお前を初めて見たのは…」
「――」
「部活の仮入部んときだ」

オレはゆっくりと話を始めた。
時は、1年と3ヶ月前へ、さかのぼる。











  * In Our True Colors *












「やっぱりレベル高いよな、青学!」
「俺やっぱりテニス部に決めた」
「オレも!!」

「………」


確かに、噂に聞いてた通り強いな、ここのテニス部は。
テニスってのも結構興味あるし、
オレもここで決定かな…。
でも、とりあえず明日バスケ部の見学をしてからにしよう、うん。
オレって、一応小学校のときはバスケのクラブ入っててそれなりに腕には自信有り。
新しいのに挑戦するのもありだけど、
得意なものを更に磨くってのもありだよな!


「(……ん?)」


なんだかチラリと気になったものが。
ものっていうか…人なんだけどよ。
誰だコイツ。見たところオレと同じ一年だけど。

身長…オレよりちょっと高い。
黄色いバンダナなんかつけやがって。目立ちたがり?
その割りに周りのヤツと全然喋ってねーし。
さてはあれか?友達いないから気を引こうとしてるのか?
……よく分からん。

髪、長め。腕、長い。足…オレの方が長ぇ!(多分)
目付きかなり悪し。それとも不機嫌なだけか?
とにかく関わらないほうが良いような気がする、うん。
自分の勘を信じよう。近寄らない、関わらない。

でも…なんか気になっちまう。
どうしてだろ。

そっちを見ない、見ない…って思うのに。
気付くと目で追ってる。
どうなってるんだオレは!?


「おぉ!!」
「?」

一年全体から歓声が上がる。
コートを見てみると…スマッシュ練習をしていた。
へぇ。カッコいいもんだな。
オレもどーんと一発かましてみたいね、是非一度。
……ん?

「……おぉっ!」

再び肝胆の声。
何しろ…あれだぜ?
スマッシュを打っている反対側のコートに現れたと思ったら…
それをダイレクトで返した人がいる。
すげーな…あの人。
さすが青学って感じがするぜ。

「見たか、さっきの」
「見た見た!」
「凄ぇスマッシュだよな」
「違ぇよ!それを返した方だよ」

「………」


―――。
騒ぎ立てる外野に対し、一人だけ澄ましてるヤツ。
驚きの声一つすら上げやしねぇ。
ぼーっと突っ立ってるだけだ。

…なんか気になる。
やっぱり気になるもんは気になる。

あの表情を、崩してみたい。
そう思ったんだ。



しかし何も起こらないまま、部活は終盤へと向かう。
事は、部室で起こったのだ。




「(……あ)」


アイツ、バンダナ落としてる。

……いいこと思いついた。


「フンフン〜♪」
「………んっ?」

わざと鼻歌を歌いながら通り過ぎる。
バンダナには豪快に足跡を残しながら。

向こうはそれに気付いて、凄い顔で食って掛かってきた。

「俺のバンダナ踏んだのはてめぇか!?」
「あー、悪ぃ悪ぃ。落っこちてるのが気が付かなくってさ」
「てめぇ、それでも謝ってるつもりかよ!!」

作戦通り…だけどいつの間にか本気で喧嘩になっていたりして。

「大体てめぇ馴れ馴れしんだよ!」
「てめぇこそ、蛇みたいなツラしやがってよ!」

言い返しながらも、そうか、オレ馴れ馴れしかったか?
とか考えてみたり。
馴れ馴れしい…それはつまりフレンドリーの延長上だよな。
…ちょっと違うか?


喧嘩しているうちに、先輩に止められた。
うーん、残念。

でも、喧嘩の間は、アイツの本当の表情が見れた気がするんだ。
見学中はあんなに澄ましてやがったのに。
闘志剥き出しの表情の方が、なんか似合ってるっつーか。


結論から言うと、話せたのが嬉しかった、だな。





  ***





「そんで翌日、オレは正式に入部届けを出したんだよな」

そうそう、結局バスケ部には見学に行かなかったんだ。
でも全然後悔してない。
こうして今海堂と居られるのも、
全てはあのときから始まってたんだな。


「つまりお前…あれか」
「ん?」
「オレのバンダナ…わざと踏んでやがったのか!?」
「あ、なんかヤバイ感じ?」

そうして、再び喧嘩である。
いつになっても変わらない。
だけどまあ幸せだから、それでいいのかな。

「ところでお前は、テニス部以外は仮入部しなかったのか?」
「ん、あ…ああ」
「?」

なんだ、珍しくも歯切れの悪い返事。
……ん?

もしかして、もしかする?

「海堂、お前もしかして…」
「五月蝿ぇ!他に興味がある部がなかったんだ…それだけだ!」
「おーおー。んじゃ。そう言うことにしといてやろうかね」


自惚れなのかもしんねぇけど。
だっていつも本音を隠しているお前だから。
だけど、喧嘩中はちょっと本心が見えるような感じがする。


だから、こんな関係を続けていきたいと思う。


「来年もこんな感じで祝えるといいな」
「…知らん」



お前と一緒に居られる。それが、


 何よりのオレへのプレゼント。






















もっと早く書こう!といって毎回ギリギリに仕上げてる自分。
桃ちゃんお誕生日おめでとぉ〜!普通に当日だよー。

桃海の馴れ初め話はずっと書きたかったので。
なんか有り勝ちっぽい気もしましたが。
一年の頃の二人をDVDで見返したら普通に萌でした。(笑)

題名はありのままの姿、という意味があるらしい。
喧嘩するほど仲が良い、が桃海の永遠のテーマだと思うので。
桃海フォーエバー!!

ひょんなわけで桃海誕生祭様に捧げます。返品可。(認めた…!)


2003/07/23