* Understand? *
「大石、練習メニューについでだが…」
「最近調子良さそうじゃない、大石」
「大石、今日は昨日に比べてショットのスピードが…」
「大石先輩、ボレーをやるときなんスけど」
「副部長ー!」
「………」
黙って聞いてればなんだよこの部!
さっきから大石×2って!
そしてその当の本人も全てに笑顔で対応してるし。
あっちへ行ったりこっちへ来たり、
引っ張りだこのしっちゃかめっちゃか!
これだから胃痛になったりするんだぞ。
無理しないで、たまには休憩しなきゃ…。
用事を終えた大石が、ふぅ、と溜息を吐くのをオレは見た。
即行で駆け寄って横から声を掛ける。
「大石!」
「あ、英二」
斜めから見えた大石の顔はなんだか疲れてる感じ。
全く、みんながみんなで揃って大石のこと呼ぶからだ!
いちいちそれに全身全霊で応えちゃう大石も大石だけど。
「ねぇ、なんか無理してない?」
「…してないよ」
「嘘でしょ」
「分かっちゃうのかな、やっぱり」
ほうらね。
オレにはなんだって分かっちゃうんだから。
何事にも頑張りすぎなんだよ、大石は。
今作った笑顔だって、明らかに空元気だし。
「大石はさ、オレの何?」
「え、何って言われても…ダブルスのパートナー…」
「でしょ?」
オレの突然の質問に戸惑う大石。
そんな表情も好きだ。
だから、手に入れたいと思う。
パートナーだけじゃない。
もっと特別な存在になりたい。
「いい、オレは大石に無理されても困るわけ」
「はぁ」
「だから、何かあったらオレに報告すること!いい?」
オレの言葉に対し、大石は笑顔になって言った。
「…分かったよ」
「うむ。合格である!」
今回の笑顔は、作り笑いじゃなかったから。
だから平気だと思うんだ。
それにしても、大石。
周りのみんなに狙われてるってわかってないのかね?
といっても、オレもその中の一人だったりするんだけど。
本当に気をつけてよね、色々と。
分かった?
そうしないと、そのうち取って食われちゃうよん。
黒菊に大石総受。笑っちまうね。(こら)
2003/07/20