* Question *












「今ちょっと本気だったね」

「当然だ」

「惜しい!部長がアレ飲んでたらおもしろ………」


それはレギュラー同士でのラリー対決後のこと。

対戦が終わった僕と手塚。

ちょっとした言葉の掛け合いの後に、手塚は何かを訊こうとしてきた。

そこを桃に茶々を入れられ、軽く睨んでいた。


固い固い、そう心の中で笑って僕は野菜汁を受け取りにいった。

そんなこんなで、その日の部活も平和に終わった…かに思えた。



手塚に呼ばれて質問されたのは、鍵当番の大石も帰った後。

僕と手塚は、部室の裏に居る。


「…で、なんでこんな所に呼び出すわけ?」

「表だと人が通る危険がある」

「慎重派なんだね、手塚は」


言うと、手塚は軽く睨んできた。

ジョウダンジョウダン、と軽く流した。


「…不二」

「なに?」

「今日…お前は俺に言ったな。本気だった…と」

「それが…どうかしたの」


手塚は腕を組むと部室の壁に寄り掛かりながら言った。


「その言葉、そのままお前に返したい」

「―――」

「…果たしてお前は、本気を出していたのか?」


いつも以上に眉間に皺を寄せている手塚。

僕は笑って流すつもりだった。


「やだなぁ。負けるぐらいだったら手を抜くわけないじゃない」

「“負けてもいいような試合だったから”とは言えないか?」

「………」


手塚の声は、低く重い。

見透かされたような言葉に、動揺を隠せない。


「なんで僕が手を抜く必要があるの?」

「…分からないから訊いている」


そうか。

手塚はもう、勘付き始めているのかもしれない。

何かに、気付いてしまったのかもしれない。


それとも、恐れているのかい?


「大丈夫。何があっても君は負けることはないから…」

「不二!」


声を張り上げて呼んでくる手塚。

僕はそのまま歩き続けた。

走らなかったのは、手塚は追ってこないという確信があったから。




手塚。

君は間違いなく、青学で一番強い。

何があろうと、それは変えようのない事実。



「恐れているのは、寧ろ僕の方かな…」



本気を出せば、僕は君に勝てるの?

君を敗って、その先に何がある?


本気を出して、その結末を見てしまいのが恐い。

僕は弱い。



 ダカラ、ボクハゼッタイニキミニカテナイ。





















負けるのと勝つの、どっちが恐いんでしょうね。


2003/07/16