* olive branch *
「ダダダダァーン!越前君発見です!」
「―――」
ある日の午後。
部活の休憩中に木陰で休んでいたとき。
後ろから聞こえてきた声に、思わず眉を顰める。
コイツって確か…。
「アンタ、山吹中の…」
「ハイっ!壇太一です!!」
必要以上に勢いに乗った喋り方と、少し高い声。
疲れるんだよね、この人と喋ってると。
まあ、構わないけど。
「部活サボってんの?まだまだだね」
「違います!今日は部活が休みだから偵察に来たです!」
大体何?
この人日本語おかしいじゃん。
俺が言うのもなんだけどさ。
「じゃあなんでジャージ着てるの」
「それは…調査も部活動の一環だからですっ!」
「ふーん…」
ヘンなの、としか言いようがなかったけど面倒だから言わなかった。
そのまま流して俺は木に寄り掛かった。
木々の間から零れてくる光がいやに眩しい。
「そういう越前君こそ部活はどうしたんですか?わわ、前が見えなっ…」
「……まだまだだね」
呟いたとき、手塚部長の声が聞こえたので立ち上がった。
この人はここに置いていこう、
と思ったらバンダナは頭に戻せたらしく見つかってしまった。
「あ、越前君どこ行くですか!」
「何って…休憩終わったから」
「…あ、そっか」
…ヘンなヤツ。
呆れを通り越してなんか結構面白いかも、とか思ってしまう。
「じゃあ僕も調査開始…わわっ!」
木の上で、鳥が羽ばたく。
枝を蹴って飛び立つ。
その時、空から何かが降ってきた。
「あてっ…なんだぁ、木の枝?」
「……」
頭に乗っかったものを目の高さに持ち上げて睨んでる。
その光景を見て、何かを思ってしまった。
羽ばたく鳥。
オリーブ色のジャージ。
若葉を付けた木の枝。
「オリーブブランチ…」
「え、なんか言ったですか?」
「いや…」
説明するのも面倒だから敢えて知らないふり。
でも、なんとなくもう一度振り返ってしまった。
「なんかさ…アンタって平和だよね」
「…それってどういう意味ですか?」
「別に分からなくていいけど」
それは、
災害が引いた印として、
ハトがくちばしに咥えてつれてきたものは、
若葉を付けたオリーブの枝だったという。
それ即ち、平和の象徴。
一瞬の視界からそんな伝説をふと思い起こしてしまっただけ。
「さっきの言葉、凄く気になるんですけど」
「まあ、誉め言葉ってことにしといてよ」
「本当ですか?」
――木陰から出ると、視界は一気に眩しかった。
カチローも加えたかった。(笑)
2003/07/14