* Freedom *
「……」
「どうした、森」
「いや、なんか色々と変わったなー、と思って…」
少し曇った顔をしているのが自分でも分かる。
更に内村に気付かれたみたいだ。
無意識に溜め息を吐きながら答えると、
向こうは眉間に皺を寄せて答えてきた。
「何言ってんだよ。これが元の在るべき姿だろ」
「そうかもしれないけど」
ぐるりとコートを見回す。
ちゃんとネットがあって、
ボールもそんなに沢山ではないとはいえ最低限必要な分はあって。
深く考えれば考えるほど、
自分がラケットを握っていることが不思議になってくる。
「何か不満でもあるのか?」
「まさか!寧ろ上手くいきすぎだと思う」
「じゃあなんだ?落とし穴が心配とかか?」
「そう…なのかな。分かんね」
苦笑すると、後ろからポンと頭を叩かれた。
振り返ると、大きな体。石田だ。
「ちょっと心配しすぎだな、森は」
「うん……かもな」
「そうそう。前向きに行こうぜ」
桜井も加わってきた。
本当に、大切な仲間だと思う。
励まされ、励まし合って。
僕は今のテニス部が好きだ。
「喋ってないで、練習始めるぞ」
「橘さん!」
振り返ると、橘さんが笑顔で立っていた。
横にはラケットを握ったアキラと深司が居た。
「勝利が向こうからやってくることは有り得ないからな」
「つまり、自分で掴み取れってことですね」
「…いいから練習始めようよ」
周りを見回すと、いつもの仲間。
この中に居ると、何故か勇気が沸いてくる。
いつまでもが闇じゃない。
きっとどこかに光はある。
だけどそれを切り開くのは自分自身だから。
だから、探しに行こう。
僕等の楽園(フリーダム)。
総受だっていいじゃんか。可愛い森君万歳。
2003/07/05