* delicacy *
「お前どうした、その包み」
部活の始まる前の部室、東方に訊かれて始まった。
「ああ、これか?俺今日誕生日だから」
先ほど貰ったプレゼント。
隠すまもなく見つかってしまったので、
半分仕方なしに返事をした。
「そうだったのか。おめでとう」
「サンキュー」
このような台詞を言われるのは少し気恥ずかしい気もして、俺は微笑を返した。
すると、東方の視線は俺の貰った包みへと注がれていることに気付いた。
「…気になる?」
「え?あ、いや…それ女子から貰ったんだよな」
「男子から貰ったと思うか?」
丁寧にラッピングされている包み。
それにもう一度見やると、東方は苦笑しながら「…だよな」と言った。
随分気になっているような目をしていたけど、
それ以上は何も訊いてこなかった。
そういう所、東方はとても良いやつだと思う。
さっさと締まってしまおう、と鞄に入れようとしたとき。
「今日のラッキースポットは海なんだよねぇ。あーあ、
ビーチには可愛い子沢山いるんだろうなー」
来た。
千石来襲。
俺はなんだか危機感を感じた。
「ん?あ、なんだ南そこに持ってるのは!」
予想的中。
隠す間は無かった。
「なになに?愛の告白ってやつ?」
「…誕生日なんだよ」
「えー、でもプレゼントくれるなんて脈有りじゃん?
どうどう?可愛い子だった??」
騒ぎはじめる千石。
東方は苦笑を浮かべながら、「先行くな」と部室を後にしていった。
纏わり着いて色々と質問攻めにしてくる。
どれ一つして答えなかったけどな。
全く、こいつはデリカシーというものが無いと思う。
「いーなーいーなー南。オレより先に彼女作るの禁止!」
「お前な…」
オレは苦笑いをするしかなかった。
言える筈も無い。
俺がお前より先に彼女を作るなんて有り得ない。
何故なら、俺が見ているのがお前だから…だなんて。
そんなことを思っていると、千石は言った。
「まあ、南の恋人になれるなんて、相当ラッキーなヤツだよな」
それはどういう意味だ、と訊くと、
だって南君イケメンだし?と言った。
俺にはこいつがどうしても理解できない。
でもどうしても目で追ってしまう。
「そうだ、オレが南の恋人にしてもらおう!
誕生日プレゼント買ってくるから待ってて!」
「もう部活始まるぞ、副部長」
俺は半分呆れた口調で切り返すしかなかった。
向こうが言っているのは本気ではないと分かっているから。
全く、こいつには本当にデリカシーというものは無いと思う。
一本列な山吹万歳。そして南ちゅんお誕生日おめでと。
2003/07/03