* A and A. *
「ねぇ、桜井君って明日誕生日なんですって?」
「ん?そうだけど」
「おぉ、マジかよ!」
突然賑わう不動峰中テニス部。
そもそも話題を咲かせたのは、
実は部長の妹というだけで専ら部外者の橘杏であった。
そして、更に発展させたのも同じくして。
「じゃあ、私と3日違いなのね」
「……なんだって!?」
突然叫び出した男。
それは、通称リズムの神尾アキラである。
「何、杏ちゃんの誕生日って…7月4日?」
「ううん。一昨日」
「……はぁっ!?」
「そろそろ休憩終わるぞ」
「ハイ!ほら、神尾」
「ほっとけ」
部長である橘桔平の声に動き出したメンバーたち。
ただし、一人を除いて。
通称リズム以下略、である。
一瞬の石化状態は、杏の言葉によって解かれた。
「神尾君、練習始まるヨ?」
「杏ちゃんっ!なんで教えてくれなかったんだよ!?」
「えー無理に教えるのも変かと思って。学校無かったから私来てないし」
そう。杏が部活に姿を現すのは稀で、
しかも学校がある日に覗く程度…と決まっている。
今年の杏の誕生日は、学校が休みである土曜日だった、のだ。
「だから今は私の方が年上なんだよ…神尾君?」
くるりと振り返り振り返り話す杏。
そこには…地面に膝を付き激しく人生に疲れを感じている神尾。
「ねぇ、神尾君ってば…」
さすがの杏も少し心配になって近付いた。
その時。
「ガッデム週休二日制!リズムにhigh!!」
叫ぶと、どこかテニスコートとは違う方向へ走っていった。
「…変なの」
やっぱり神尾は面白い、と再確認する杏だった。
そんな時、兄の登場。
「杏」
「あ、お兄ちゃん!」
「神尾はどうした」
「なんか…遠くへ走っていっちゃったよ」
けろりと答える杏。
橘は眉を顰めると、杏に一つの指令をだした。
「ちょっと、お前見つけて来い」
「はーい」
ゆっくりと走りながら、杏は思うのだった。
今年の誕生日も平和だったな、と。
神杏万歳。やられ役ヘタレ神尾。黒煽り受杏。そして常にギャグ。
2003/06/30