* exclude→adultery *












「行ってきまぁーす!」
「はいはい行ってらっしゃい」


私は、いつも通りに家を飛び出した。
でも、今までと一つ違うのは…。

「あ、おはよー」
「おはよ、

朝から、雅也が家の前で待っててくれるってことだ。
なんか…ちょっとカレカノって感じで良くない!?

「なんか…微妙に照れるね、こういうの」
「今までと対して変わらないはずなのにな」

笑いながら、私達は歩き始めた。
歩いてる間、私は「クラスの人に見られたらどうしよー」とか思ってた。
冷静に考えたら…今までも登校は一緒だったんだけどね。
ただ、待ち合わせしてるかしてないか、っての違いだけ。

「ね、昨日のドラマ見た?9時からの」
「えー、見てねえ」
「勿体無い!超感動ものだったよ!私もうボロ泣き!
 見終わったときティッシュ箱空っぽだったもん!」

言うと、雅也は笑った。
そして笑顔を向けると、言ってきた。

「お前本当に涙脆いもんな。涙脆いっつーか泣き虫っつーか」
「…うるさいなぁ」
「くすぐられただけで泣くし」
「だってあれは!…あれ、は……」


…ヤバイ。

思い出しちゃった、あの夜のこと…。

ダメダメダメっ!


「と、とりあえず!これから私をくすぐるの禁止」
「そうなん?」
「だってあれホント辛いんだって!」

くすぐったいとは別の意味でも、ね。

「くすぐられてるときの、面白いのにな」
「ちょっと、こっちの身にもなってみなさいよ!!」

全く、本当に…。

でも…この様子だと、
やっぱり向こうは意識してない、かな?
それのほうがいいんだけど…うん。
まさか、私がこんなこと考えてるなんて、思ってないだろうなぁ…。





教室について、やっぱり私達は一番で。
二人で、色々と話した。
今までと変わらない、日常。

そうしているうちに、人がやってきた。


「お、今日も見せ付けてくれるじゃん?ふ・う・ふ!」

厭味ったらしく言ってくるそいつ。
それに対して雅也は、

「オウ。金婚式まで行くからな」

だって。
…さり気なく大胆な発言してくれますね、オイ。
もうヤケって話ですか?ははは。

まあ、これからはお互い誓い合った仲、だしね。


ところで訊いてきた本人は、
いつもとは違う私達の返事に戸惑っているようだった。

「あ…そうですかい。頑張れよー…」

…なんか面白い。
今まで、否定してたから面白がってきたけど、
意外と認めちゃうと静かになるものなのね。
完全にやられたね。

「ごゆっくり〜」

手を振りながら、そいつは教室から出て行った。
今のはギャグだったのか、本気だったのか、
冷やかしだったのか…分からないけれど。

一瞬の沈黙の後、雅也は口を開いた。

「…今の奴もさ」
「え?」

私に真っ直ぐと視線を合わせてくると、雅也は言った。

のこと、好きだって噂だぜ」
「…はぁ!?」
「アイツだけじゃない。昨日の二人だってそうだ」
「え、え、ちょっと待ってよ!」

な、なにぃ!?
それって…つまり、あれかい?
私って…ギャグ抜きにモテてたんだ…。

「…お前、これも気付いて無いわけ?」
「ごめんなさい…」
「全く、抜けてるんだから」

雅也は私の頭をコツンと小突いた。
なんとなく、口を尖らせてしまう。

「…なんかさ、みんなうちらのこと余分にからかってくるの、
 それも関係してるような気がするんだよな」
「私が…好かれてるって?」
「邪魔したかったんじゃねーの」

雅也は頭の後ろに手を組みながら言った。
…ところで、疑問。

「ねぇ、どうして…あいつらが私のこと、すき…だなんて知ってるの?」
「…男子だって、たまには好きな奴の話とかするよ」
「そっか」

話してると、女子の友達が教室に入ってきた。
特に冷やかすでもなんでもなく、おはようとか言いながら手を振る。

「…なんか、こうしてみちゃうと世界が違うものに感じられるよ」
「初めからこうしてりゃ良かったな」
「そうは言ってもさっ、まさか両想いだなんて思ってなかったし…」

一つの机を挟んで向かい合った私達。
なんだか朝からピンクなモードです。
こんなの、数日前の私達からじゃ考えられない。
なんか、不思議…。

「そうだ、今日お前うちこないか」
「何故に?」
「今日は部活が無いんだよ」
「そうなの?」

疑問を投げかけると、雅也は言った。

「今日は委員会だろ」
「ふーん。雅也委員会入ってないもんね」
「お前もだろ。昔からジャンケンだけは強いやつめ」
「お互い様」

そうして笑い合う私達。
教室でもこんなに会話するなんて、久しぶり。
突然の態度豹変に戸惑うクラスメイトも多々。
だけど、冷やかしは減った。
裏を掛かれたね、これは。








そうして放課後。
私は雅也の家にやって参った。


「お邪魔しまーす」
「今日は誰も居ねぇよ」
「あ、そうなん?」

確かに、いつもと違ってなんだかシーンとしてる。
靴を揃えながら私はそう思った。

「まあ、とりあえず上がれよ」
「ほいさ」

上りなれた階段。
今日もいつもと変わらない。
少し変わったのは…天井が低くなったこと。
前を歩く人が大きくなったこと。
それぐらい。

「じゃ、その辺座ってろ」
「どーも」

遠慮無しに、床にぺたんと座る。
雅也の部屋は絨毯だし常にオールクリーンなので問題なし。
…私の部屋より綺麗なんじゃない?
いや、私が女の部屋の割りに汚すぎるのか。それだ。

「飲み物はオレンジジュースでいいよな?」
「おう!あ、いや、ちょっと待った…」

私の行動パターンが読まれているっ!
ここは裏を掻かなくては…。
よし、ここは私の二番目に好きな…。

「カルピスはねーよ?」
「…蜜柑果汁で宜しく」
「なんだよその言い方」

…読まれてました。てへv


雅也が階段を下りていくのを確認して、
私は部屋中を見回した。

…なんでこんなに片付いてるんだ?
アイツそんなに掃除でもする性質か?
そうか、きっとおばさまが常に美しくキープしてるんだわ。納得。

「…エロ本でもねーのか?」

私がベッドの下を除こうとしたとき。

「お待たせ」
「ぅぉっ!?おう雅也君!速かったナ!」
「…なにお前動揺してんの」
「……」

危ういところであった…。
忍は陰での任務遂行が決まり。
見つかってしまったらそれまでよ。
って私は忍者かよ。

「……ねぇ雅也」
「ん?」
「私何しに来たんだっけ?」
「……さあ」

ジュースを飲みながら、なんでもない会話。
…ホントに何しに来たんだっけ?
……ま、いいか。

そうして静かにジュースを飲んでいたはずなのに。


「……あ」


どうしてこうなるんでしょう?自分。
制服に橙の染み。万歳。

「げっ、お前何やってんだ!?」
「零した」
「なんで普通に飲んでて零すんだよ…ホラ」
「おー、どーもど−も」

ティッシュ箱を渡されて、私はそこを拭き始めた。
あやー。こりゃ染みになるかも。まずいねー。

すると、いつの間にか部屋から出ていた雅也は下から駆け上がってきた。

「ほら、こっちの方がいいだろ」
「あ、ありがとー」

雅也は濡れ布巾を掲げてみせる。
ナイスアイディア。感謝感謝。

「…ったく、お前って本当に昔から全然変わらねぇ」
「悪ぅございましたね」
「あ、それスカーフにも掛かってねぇ?解いた方がいいだろ」
「おーおー」

先ほどから感嘆詞ばかりの私に対し、
テキパキとした行動の雅也。
凄いなぁ。真似できないね。

そうして雅也は拭いてくれようとしたけど…フリーズ。

「…お前、自分で拭け」
「はい?」
「いいから!」
「……?」

とりあえず無言で布巾を受け取って。
そうして私は気付いた。


濡れている制服は見事にスケスケ。
おまけにピッタリ張り付いちゃって。
更にセーラーのスカーフは解かれているという。
なんともエロティックな構図。
ついでに家には誰も居ないというシチュエーション。
うら若き乙女の胸倉に手を這わすとは健全な男子には抵抗があると見える。

なんということか平日火曜の放課後。


「やぁーねぇー雅也ちゃんったら、ウ・ブv」
「その喋り方やめろ…」
「やー照れてるー」

こっちを見ないように顔を背けてる雅也。
横顔はバッチリ真っ赤。

これって…つまり、さ。
向こうも意識してるってことでしょ?


「ね、雅也」
「なんだよ…」

私は雅也の肩に掴みかかった。
そして、無理矢理こっちを向かせる。

「ね…私達さ、仮にも付き合ってるじゃん」
「…ああ」
「そういうことさ、起こってもいいと思うんだけど」
「そういうことって、なんだよ…」
「分かってるくせに」

言うと、雅也は無言になった。
私は言った。

「ね……いいじゃん?」

無意識に、私は笑顔だったと思う。
雅也は戸惑ったふうな顔をして、
でもすぐに真剣な顔になって。

「…ん」

右上の額にキスをされ、私は反射的にそっちの目を瞑った。
不思議な気持ち。
心地好い鼓動が全身を巡る。

「本当に…いいのか」
「どうぞ」

微かに感じる期待感。
それと同時にちょっと緊張もしてるみたいで。
ふわふわ浮いてるみたい。

それは、雅也も同じなのかもしれない。
私の左手首を掴んだ雅也の右手、ちょっと震えてる。

頑張ってる感じがしていいぞ、青少年。

なんて余裕ぶっこいた発言を頭の中でしている自分ですが
それはパニックのあまりに自分の中に居る自分じゃない誰かが客観視しているような
まあなんというか正直な話自分がなにを考えてるんだかも分からないほど
大それたことをしているということに気付いてるようなでも理解してないような
つまりは混乱しているわけです。結論はそんな感じ。

うーん。
こういうときは悩んでたってしょうがない。
行動に出るのみですね。


えーいちゃん発情。


「…わっ、!」
「悪いね、こっちも盛り時なんですよ」

雅也が腕を掴んでるのを知ってて、
私はわざと後ろに倒れこんだ。
そう、まさにこれは雅也が私を押し倒したような状態。
すぐそこにある顔の赤さがなんともリアル。

「ちょ、ちょっと待て」
「待たん」
「ごわぁっ!!」

起き上がろうとした雅也の腕を無理矢理引っ張る。
転んで、腕で繋がったまま転がって。
気付けば、私が上に居る。

「おぉ…これもなかなかいい見晴らしですね」
「お前な…」

そうですよ。
オクテ雅也なんかには任せてられない!
ここは私が……?

「アレ?」
「また形勢逆転、だな」
「…元に戻ったとも言う」

一瞬にして力でひっくり返されて、私は下に。
そうですよ。これですよ。私が求めていた構図は。
漸く向こうもやる気。
さあナイトショーの始まりですよーってか?


「こうしたのはお前だからな」
「分かってますとも」
「嫌だっつっても止めねーぞ?」
「どうぞご自由に」

そんな余裕綽々発言。
だって、これこそ私の求めていた展開だもの。

リボンも解いて、肌蹴ている私の胸元。
雅也はそっと首筋にキスをした。
ああ…なんだか、不思議な気持ち。
よくわかんないけど…幸せだぁ。

「……ひゃぅ!っ!?」

しかし鎖骨に舌が来ると、
無意識のうちに声を上げてしまった。
ガバッと口を手で塞ぐ。

「どうした?」
「な、なんでもないです大丈夫です」

そうは言ったものの、頭の中は再びパニック。

また出た。
あのヘンな甘い声。
一昨日の晩を思い出す。

お、パニックを通り越して妙なほど冷静になってきたぞ!?
私達…今何やってる!?
なんか凄いことになってない!?
ヤダ……。


 コワイ。


どうしよう…でも、
やだ、泣きそう……。


「…?」
「ぅ〜〜…」
「お前、本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですって!大丈夫なんですよ」

そう言い放った。半分自分に言い聞かせるように。
でも、意識と身体の反応は正反対だ。
身体は、熱いのに。
まるで寒いみたいに震える。
全身がガタガタ揺れる。
これって…怖がってるの?
私、恐怖を感じてるの?
止まれって思うのに止まらない。

ヤダよ……。
あ、涙溢れてきた…。



「やぁっ!!」


咄嗟に全身を抱え込むようになった私。
降ってきたのは…瞼への軽いキス。

「……?」
「その…ごめん、オレ」
「何で、謝る…の?」

涙をポロポロ流しながら話す私。
雅也は随分困った表情で。

「…やめようぜ」
「なんで!私は大丈夫だから…」
「無理すんなよ」
「……」

それ以上は、私は何も言えなかった。
震える身体と流れる涙が何よりもの枷。

「ちょっと、背伸びしすぎたんじゃねぇ?」
「…そうかもしれない」
「また今度の機会ってことでな」

雅也は私を抱き起こしてくれた。
そして目が合うと、どちらともなくキスをしていた。

その時、気付いた。
口と口でキスするの、初めてだってこと。
なんだか、色々と順序を間違えていた気がして。
自分たちがどれだけ子供だったかってことを思い知らされた。



今日は怖さの方が優ってしまったけれど、
次はそれにも負けないくらい、
もっと雅也のこと大好きになって、
もっと大人になってやる!

そう誓った私でした。


もう子供じゃない。
だけど大人にもなりきれていない。
この微妙な時期を、思春期っていうんですね。

それを漸く認識して、私は雅也に笑って言った。


「これからも青春満喫しましょうや」


後戻りは出来ない。
先に進むことしか出来ない。

その道がどこまで続いているか、二人で探して行こうと思う。






   -excluded-






















裏々桜井君夢シリーズ完結!全3話!万歳!
青学のどのキャラよりも先にシリーズってなんだ。
しかも誕生日に関係のない内容で。
異例だ…桜井君。どうしよう。でも好きなんだって。

テーマが一話ずつちょっとずつ動いてることに気付きました?
一話目は幼さから脱出、二話目で青年期に入ります。
三話目は大人になるか?と思いつつもそれにはちょっと早過ぎるねってこと。
題名を和訳すればよく分かるかと。まんまなので。

とりあえず桜井君書けて嬉しかった。
皆さんがあんまり書いてくれないので自分で書く。(切ないな)
しかしそのうち増えると信じている。カモン!!(何)


2003/06/27