* 計画実行 *
だって貴方、まだ言ってくれたことないでしょ?
「私の私の彼は〜左利きっ」
「…なんだその歌は」
「知らないの?これは…」
「そうではない。なんでそんなものを歌っているのかを訊いているんだ」
左手にペンを掴んで、紙に滑らせる貴方。
それを見て、私は思わず…否、わざとその歌を口ずさんだ。
絶対に、貴方は何か言ってくるって分かってたから。
「だって、国光は右利きじゃないでしょ?」
「そうだが…」
「何か間違いでもある?」
「……ないな」
納得すると、また紙に続きを書き始める。
生徒会の書類らしいけど、詳しいことは分かんない。
私は横に居るだけで、幸せ。
でも、今日はもう少し上を目指してみようと思います。
「ねぇ国光」
「ん?」
「私のことスキ?」
「――」
訊くと、一瞬の沈黙。
この沈黙も何もかも、予定通りです。
さあ、後は流れに任せましょう。
「何故そのようなことを訊く」
「だって、はっきりと言ってくれたことがないでしょ?」
「……」
言うと、国光はしかめっ面をした。
でも、本当にないもの、伝えてくれたこと。
「何か間違いでもある?」
「……ないな」
よぅし。
本日の予定は滞りなく決行されました、
と思ったら……。
「…っ!?」
慌てふためく私。
夕日が差し込んでくる生徒会室には、
若い男女が二人きり。
合わさっているのは、二つの紅。
計画実行。
作戦成功。
予想以上の収入。
だけどまだ、はっきりとは伝えてくれてないね。
こんな駆け引きは、まだまだ続きそうです。
歌わせてみたかったのです。(全ては私の計画実行でした)
2003/06/26