* 向日葵の花 *












校庭の片隅にあった、小さな花壇。

そこから目を出しているのは、小さな芽。


「あ、なんか生えてる〜」

「なんかって何?雑草?」

「違うよ!ちゃんとした花が植えてあるんだよ」


丁度通りかかった千石君。

後ろで余計なことを言うもんだから一発喝を入れて、

倒れている札を捲った。

おぉ、これは向日葵ですか。


「これ向日葵の双葉だよ。可愛い〜」

「へー。出てきたときはこんなに小さいんだな」


花になんて興味無さそうなその人。

それでも少し顔を寄せて、小さな芽を覗いていた。

そんな時、一つの事に気付いた。


「ね、私さ」

「ん〜?」

「3つの言語で“ヒマワリ”って知ってるけどさ」

「へぇ、凄いじゃん」


まだそれと睨めっこしてるその人。

それを横目に、とある共通点に気付いて、空を見上げた。


「全部、太陽が関係してるんだよね」

「ふーん」


興味があるんだかないんだか曖昧な返事をされる。

気にせずに続けた。


「伝わってきた場所が同じなのかな。でも、全部お日様が関係してるんだよ」

「まあ、確かに太陽ってイメージあるしねぇ」

「でしょ!?」


話に加わってきてくれて、嬉しくって声を上げる。

だって、私の目標だから。


「お日様の光を浴びて、明るく元気にぐんぐん育つ。いいなぁ〜…」

「あー、君似てるよね、向日葵と」

「ほんと!?」

「うん。ぼーっと突っ立ってる辺り」

「…なんですってぇ!?」


花壇の前で騒ぎ始める私達。

背中に浴びる陽光が、温かかった。

彼の顔はそれに照らされ、眩しかった。


「じゃ、喧嘩はこの辺にしてと」

「アンタの発言が始まりでしょ…」

「まあまあ。でもさ、分かるよ」

「なにが」


まだ少々怒りの治まらない私に対し、

向こうは満面の笑みで言ってきた。



「オレの一番好きな花って、多分向日葵だから」



それだけいうと、じゃねっ、と去っていった。

そういえば今日のラッキーカラーは黄色だったかな〜

とか呟きながら帰っていく背中が、

なんだかとても微笑ましかった。


花壇を見やり、空を見上げて。

かんかんに照る太陽に向かって腕を伸ばした。



 私も頑張ろっ。






















お天道様目指して。


2003/06/25