* 常識でしょう。 *












「やっほーい!」

「わ、エージ!!」


それは、私は朝優雅に一時間目の宿題をやっていたとき。

ドタバタとした足音の直後、

何者かが覆いかぶさるようにしてきて目を塞いできたのだ。


何者って言っても、一瞬にして誰か分かったけど。


「ほへ、なんでオレだって分かったの?折角目塞いだのに」

「声で分かる!それに…あんな非常識なことするの英二ぐらいだもん」

「にゃんだよその言い方!まるでオレが常識外れみたいじゃん!」

「だってそうでしょ?」

「違ーう!!」


その喋り方がまず常人と離れてますよ、と突っ込みたくなる。

動きもそうだし。

性格もなんだか一般人から少し外れてる気がする。


「とにかく離れて!私は宿題の最中なの」

「いいじゃん宿題なんて!オレもやってないもん」

「英二と比べたって何の当てにもならない」

「それひっでー!」


周りでぎゃんぎゃんと騒いでいる。

集中できないから静かにしようよ、といっても無駄なんだろうね。

だって、この人は常識と少し外れているから。


それにしても…ゴガツバエっ!!(訳:五月蝿→うるさい)



「…っエージ!!」

「は、ハイ!」

「お願いだから…静かにして…」

「…えー、どうして」


まだ遊び足りない〜とでも言いたいかのような不満有りげな瞳。

ウルウルしちゃって子猫みたいね、ってそうじゃない!


「全く、口でも塞いどきなさい」

「…いいの?」

「は?――っっ!!」




ここは仮にも教室で。

周りにはクラスメイトが居るわけで。

勿論数人はその瞬間を目撃してしまったわけです。



「………」

「ぷは、ごちそうさま!」


突然塞がれた口。

私は放心しかけていた。


確かに私は口を塞げといいました。

でもね、誰も“私の”とは言ってないんですよ。

この人は分かってやっているの!?

それとも分かってないんですか!?


「え…エージっ!!」

「あ、やっぱ怒っちった?」

「決まってるじゃない!こんな教室のど真ん中でキ……す…なん、て…」


視線が集まってる気がして、顔がカッと熱くなる。

小声になった私を見て、英二はカラカラと笑う。


「いいじゃん、前借りってことで。いつかするつもりだったし」

「!!」



そうだった。

この人には、一般人の“当たり前”が通用しないんだ。


だって、この人は常識と少し外れているから。























そもそも常識ってなんですか?何を基準に前へ倣え?


2003/06/24