* 嗚呼、青春。 *
「ついに…ついにやってきたのね!!」
門の前で立ち尽くす私。
独り言を始めた存在に、皆の視線が降り注ぐ。
いけないいけない。
出だしからこんなじゃ駄目よ。
私は…文字通りここで青春を過ごすんだからっ!
「待っててね手塚君!!」
勝手に個人名を叫ぶと、私はそこを走り抜けた。
突き刺さる視線は気付かないふり、
というか正直気にしてません。末期。
「青学テニス部集合!」
それは放課後のこと。
つ・い・に発見致しましたっ!
部を仕切ってます…カッコいいです。
小学校の頃は手塚君なんて呼んでたけど。
それより前なんかくーちゃんなんて呼んでたけどっ!
(実は家が近所で親同士はそれなりな付き合いをしている)
これからは…手塚先輩vとか呼ばなきゃいけないのかしら?
うーんなんとも言えずっ。
べったりフェンスに張り付いて見学する私。
そんなストーカー染みた行為も約2時間。
ついにその日の部活は終局な予感。
ところで、私入学初日から何やってるんでしょう。
いやいや、そんなことを気にしていたら青春過ごせません!
「それでは本日の練習はここまで…解散!」
「「ありがとうございました!!」」
一礼をして、皆が散らばっていく。
ふーむ。これはチャンス?
同じ学校に入学したということを、
やっぱり見せなきゃね。
しかし邪魔だ…あの丸坊主の人。
今時流行らないんだよ。ぷぷっ。
でも前髪イケてるから許しちゃう。
その代わり早くどいてね。
「それじゃあまた明日な、手塚」
「ああ」
ついに爽やかさんが手塚君の前から消えた。
むむ、良く見ればあの髪形青春って感じでいいわね。
伊達に青春学園に二年以上通ってる先輩ね…。
ってそうじゃないでしょ、私っ!!
「手塚君っ」
「…?」
うひょぅ!話し掛けてしまいました、自分!
頑張ってます。頑張ってますよぉ…。
振り返った手塚君はなんだか眉間に皺を寄せてます。
その表情、いいねぇ。
昔の無邪気な笑顔も良かったけど、これも渋くてイケる。
これこそまさに、青・春!
「久しぶり!二年間で随分背が高くなったんだね」
「……」
「あ、そうだ。私今日青学に入学したの。同じ学校受験したんだよ!」
「あの…」
「ん?」
勢いで喋っていた私は、そこで漸く手塚君から言葉聞く。
さっきも思ったけど、この声。いいねぇ。
ところでなんだしょ?
「…お前、誰だ」
「―――」
チーン。
御臨終。
私の春は、一瞬にして散っていったのでした。
青い…青いまま終わった!
紅く実ること無く、青く酸っぱいまま枯れてゆく…。
終わった、私の青春っ!
否、終わっては居ないのかもしれない。
これこそまさに青・春!
ふられてこそ青春!失恋=青春!
私ってば無意識に青春満喫中!?
しかしそれにしても変ですね。
なかなかにして親しかったはずなのに…。
名前を説明すれば思い出してくれるかしら?
いや。ここは敢えて説明しない。
これはきっと、神様が私に新たなる道を与えてくれたのよ!
「あ、すみません。人違いみたいでしたv」
「手塚は俺で正しいが」
「いや、あの、私が探してるのは手塚治虫様で!」
「……ああ、そうか」
いうと、手塚君は?マークを浮かべたままどこかに消えた。
ふふふ…そんな天然なところも好きだったんですけどね。
しかし、それはもう過去の私!
宣言。たった今…私は生まれ変われますよ。
「あのー…」
「ん?」
「お名前、なんていうんでしょうか?」
「俺?大石秀一郎だよ。ところで君は?」
「大石秀一郎様ですね…ご理解」
「あ、あの…」
「有り難う御座いました〜!!」
「……??」
新たな春を発見致した。
これぞ青春。
まさに青春。
青学に入学してよかった…と、
心の奥底から思うのでした。
嗚呼、青春って素晴しい。
青学だからね。青い春満喫しなきゃ。
2003/06/23