* 諦めないで *
「なぁ、相談があるんだけど、いいか?」
「別にいいケド…」
ある日突然、クラスメイトから相談の依頼。
普段はそこまで話す相手じゃなかったので少々疑問。
「なぁに、相談って」
「実は…好きな人が居るんだけどよ」
「――っ」
途端、強く脈打つ心臓。
まさか、そんな相談だっただなんて。
驚きでないの。
「へぇ。それって…誰?」
「お前の、親友だよ」
「!」
そうか…そっか。
だから、私に相談なんて。
「でさ、アイツに好きな人いるかとか知らないかと思って」
「ああ…居るよ」
「マジで!?」
「うん。マジ」
意地悪なことを言ってみる自分。
うん。あの子には好きな人が居る。
桜井雅也っていう好きな人が。
「それって…結構沈むな」
「まあ気にすんなや」
「…誰?」
「ヒミツ」
わざと意地悪する。
喜ぶ貴方なんて、見たくないもの。
嫌いだから?
ううん、違う。
そもそも、親友と好きな人が同じだった時点で終わりだったかな。
「好きな奴居たんだな…アイツ。そいつが恨めしいぜ」
「ははっ。わら人形でも打っとけ!」
「笑うなよ…」
沈んだ顔をする貴方。
真実を知りもしないで。
喜ぶ顔を見るのも癪だけど、
沈んだ顔も結構嫌…かも。
「諦めようかな…」
「…っ諦めないで!」
「――」
思わず声を張り上げてしまう。
少し目の前が潤むのが分かる。
ああ、私って損な性分。
「諦めなければ…きっと…振り向いてくれるって、信じなよ」
「そうは言ったって、お前…」
「諦めたら…上手くいくものもいかないよ」
言い切った後、微妙に後悔の念が包んだ。
だってその二人。
諦めなければ、必ず上手くいくんだもの。
恨めしいね、全く。
「そう…だよな。なんか元気でた」
「そぉ?」
「お前に相談してよかった。サンキューな」
そう言うと、明るい笑顔で去って言った貴方。
これから、笑顔を交わすあの二人を見るのかな、
と思うと少々辛いけど。
とりあえず良いことをしたぞ、という偽善染みた
妙な気持ちが体中を巡った。
諦めないで追い続けたって
届かないものがあることに気付いた。
時により諦めも肝心。
2003/06/22