* 鎖 *
「風邪引いた」
「え?」
「シュウの所為で風邪引いたっ!!」
頭痛い。
喉痛い。
全部シュウの所為だ。
「どうして俺の所為…」
「シュウが私に心配掛けるから」
「…?」
覚えが無い、という感じでシュウは眉を顰めた。
そうに決まってる。
だって私シュウになにもされてないもん。
だけど、止められないんだ。
「シュウの所為だ〜…」
「分かったから、泣くな!」
言うと、シュウは私の体を引いてくれて。
そうして私はシュウの胸の中に転がり込んだ。
温かい。
落ち着く。
全部シュウのお陰だ。
「で…風邪引いたってのは本当なのか?」
「…ウン」
「どうかしたのか?寝不足か?」
「そんなところ」
「あんまり無理すりなよ」
言うと、背中に回っている手は更に強く引かれて。
強く強く抱き締められる。
…ありがとう。
心の中で、本人に向けるでもなく、
小さく小さく呟いた。
だけど、本当にシュウの所為だから。
離れて行っちゃうんじゃないかって、たまに怖くなる。
布団に潜って、涙を流す。
そうしていると眠れなくなる。
ねぇ、だからさ。
鎖で繋がせてよ。
離れていかないように。
いっそのこと私を縛り付けてよ。
いつでも一緒に居られるように。
イヤだなんて、絶対言わせないから。
「だったら無理しないで家帰るか?静かに寝てたほうが…」
「ん、大丈夫」
自分でシュウを抱き直した。
強く引きながら、言う。
「ここに居れば、全部治るから」
「…それならいいけど」
温もりを感じながら、頬に一つ雫を伝わせた。
頭痛い。
喉痛い。
心痛い。
全部、シュウの所為。
人の所為にするのは良くないと分かりつつも。
(大稲設定でいかせて頂いた)
2003/06/19