* 犬と猫 *
それは休み時間のこと。
「だぁーちっくしょうマムシのやつ!!」
「どうしたの、桃」
「あ、いいところに!ちょっと聞いてくれよ」
「はぁ」
叫びながら教室に入ってきたクラスメイト。
本日はどことなく荒れてます。
原因は隣のクラスの海堂だとか。
二人が仲悪くてテニス部でもライバルだってのは知ってるけど…。
「アイツが今日じーっと何かを見てると思ったら…その視線の先には、だぜ?」
「ふんふん」
「お前が居たんだよ」
「へー……ぇえっ?」
「な、ムカつくだろ!?」
「いや、別にムカつきはしないけど…ビックリした」
突然そんなことを言われて一瞬頭が認識しなかったけど、
すぐに理解すると大声を上げてしまった。
驚いた…うん、驚いた。
海堂とは去年同じクラスで少し喋ったことがあったけど…。
そんなまさか!?
確かに、クラスの中では私が一番多く海堂と話してたけど…。
(他の人は近寄ろうとしないから…。つい話し掛けてしまう)
「あ〜マジムカつくぜ」
「それが何でムカつくの?」
「だってよ、お前のことを見るのはオレだけでいいのに」
「そっか……はぁ?」
「おっと、いっけね!パン買ってこないと売り切れちまう!」
「………」
行き成りの二つの告白に、私は戸惑うだけだった。
教室から走って出て行った桃城を気に掛ける余裕もなく、
気付けば口を開けてぼーっとしていたり。
海堂と桃城が?私を……?
「どうしましょうねこりゃ」
額に手を当てながら、二人の顔を思い浮かべてみた。
少し気紛れで独り善がりなところがあって、
無言で闇の中を走っていくような、
まるで猫を思わせる海堂か。
忠実な態度でいつでも傍に居てくれそうで、
明るい太陽の下元気一杯に走り回ってるような、
まるで犬を思わせる桃城か。
さあ、どちらがいいでしょうか。
「そうだなぁ〜…どちらかと言えば」
一つの顔を思い浮かべて、思わず顔が綻んだ。
ちょっと棘があるけど、本当は優しく美しい。
「サボテンみたいな人……?」
一つ年上の先輩を想って上の階に向けて顔を上げた。
ふいに何故か、喧嘩している犬と猫が宙に見えた。
桃海真ん中BD記念。不二はやはりいいとこ取り。
2003/06/16