* 花の無い草 *












 不動峰テニス部は、

 今日も草むしりから活動を始めます。



一通り仕事を終えたらしく座り込んだ鉄。

その横にしゃがみ込んで話掛けた。


「毎日お疲れさん」

「ほんとだよ。でもこうでもしないと何も出来ないしな」


そういって、本来ならそこで活動しているはずの

テニスコートの方へ振り返った。


「こんなところでしか練習できないようじゃ…全国には…」

「何言ってんの!そのうちそのうち!」


私はガッツポーズを掲げて見せた。

本当に今のテニス部は大変な状況にあると思うけど、

そのうちきっと強豪になるって…そう信じてるんだ。


「…あたしね」

「ん?」

「芝刈った後の匂いって好きなんだ」

「へぇ。そうなのか」

「なんか、いい匂いしない?」


何故か分からないけど、好き。

何となく落ち着く香りがする。

私の言葉に対し、鉄は苦笑いをした。


「本当に、芝刈り機でも欲しい気持ちだよ…」

「あー、そういうこと言うない!!」


むしられた後の雑草や芝たちを見る。

何故か、胸一杯になる。


「花は無いけどさ、強いよね。この辺の草は」


たくましく生きてる。

そんな感じがして、好きなんだ。


「強いのはいいけど、俺としてはもう少し弱くなってほしいけどな」

「だーかーら!そういうこと言わないの!!」


騒いでるうちに活動を開始するテニス部だった。

私はくるりと踵を返して、ぽつりと呟いた。


 「頑張れよ」



少し地味で目立たなくたって、

地道に元気に生きている君だから。

だから応援したくなるんだ。























芝生の匂い好き。雑草も頑張ってるっぽくて好き。


2003/06/14