* 鳥籠の中に *












昨晩寝る前にカレンダーを確認したからかもしれない。

夢の中、私は鳥籠の中の小鳥だった。


外へ出ることを恐れた鳥。


鳥籠の蓋は、開いている。

なのに飛び立つことを拒んだ。


見える、そこにいる黒い猫。

小さな体でいる私にしてみれば、それは恐怖で。

羽を広げることにさえ臆病になってしまった。


鳥籠の中。

身を小さく固めて。

動きもせずに時が経つのを待った。


その時、人の顔が見えた。

優しそうな笑顔の。

夢の間は、それが片想いの相手だなんて認識しなかったけれど。


「なに鳥籠の中なんかで小さくなってるの」

「……」


私は全く声を出すことが出来なくて。

揺れる視界でその人のことを見つめていた。


にこりともう一度微笑むと、背中を向けて離れていった。

と思うと、数歩で止まって振り向いてきた。

そして、一言。




  「出ておいでよ」




――――――……。




  * * *




「あ……」


目が覚めると、私はいつものようにベッドに寝ていた。

窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえる。


「夢…」


そして漸く、先ほど自分に微笑みかけてきていた人のことを認識した。


「不二…くん」


今日は、なんだか朝からいい気分だった。

カレンダーを見過ごしたわけではないけれど。


家のドアを開け放つ私の足取りは軽かった。




そして後に学校に着く直前に黒猫を目撃したりする。



 夢から始まり現実に続く

 十三という名の

 今月二度目の金曜日。























何故こういう日に限って黒猫を見るのか。


2003/06/13