* やっと。 *
ついに。ついにですよ。
やっと…やってきましたー!!
「ハロー夏休み!!」
「五月蝿ぇ」
教室から飛び出した瞬間に思いっきり叫んだ。
すると、後ろから冷たい一言。
海堂薫君でございます。
「ちょっと、今の一言聞き捨てならないなぁ!」
「邪魔だ。どけ」
「なにをぅ…!」
結局、海堂はフンと鼻を鳴らすと
部活道具と思われる大きな荷物を背負ってどこかへ消えた。
「こしゃくな…」
去っていく背中に小さく呟いたけど、
強く言うことは出来なかった。
行き場のなくなった拳を見つめた後、ゆっくりと下ろす。
クラス内では怖いと少し避けられているあの人。
どうしてあんな風に喋れるのか、と私は疑問を持たれる。
そんなの、こっちが聞きたい。
まさかあの人のことが好きだから、とか。
そんな理由は認めちゃいないんだから。
やっときた夏休み。
やっと貴方と顔合わせなくて済む。
そんなことを考えてる私は、新学期
『やっと、会えた』
と、思うのだろう。
愛しいほど反発してしまうものです。
2003/06/11