* 現実虚無 *
「不二」
「?」
「今日限りで、転校するんだよね?」
頼りなく見えて大きい背中を見つけた。
声を掛けると貴方は無言で振り向いてきた。
にこりともせず無表情で答えてきた。
「そうだけど」
「ふーん…」
私は興味のないふりをする。
感情を篭めずに声を出す。
胸からこみ上げてくるものを隠す。
たった少しの間同じクラスだっただけ。
それなのにここまでも深く入れ込んでしまった。
入り組んだ気持ちは、元に戻せないと思う。
「どこ…行くの?」
「聖ルドルフ」
「へー、聞いたこと…ないや…」
震える声を隠せない。
感情を抑えられない。
想いはいつまでも色褪せない。
「まあ…そっちでも頑張れや」
「そのつもりだ」
それ以上は言葉が出なくって。
引き止めることなんて到底出来なくって。
去っていく背中は小さくなっていって。
空っぽの心。
空虚感。
埋められるものが見つからない。
さようならって、笑顔で言うはずだったのにね。
再会の時を信じて。
2003/06/10