* ナミダ *












学校の帰り。

足元を見て歩く。

四つの靴が進んでいくのを見る。


下を見るのをやめた。

何かが、溢れてきそうな気がして。


私、目が悪いのに…涙がたまると前が良く見えるわ。

へへっ。

…その涙も、溜まりすぎると視界が歪んで

また見難くなっちゃうんだけど。

それも更に越えると、縁を越えて零れ落ちる。

頬に冷たい雫が伝う。

どうしてこんなにも冷たいんだろうと思い、

何となく上を見た。

すると、降り注いできたものに気付く。


なんだ、雨か。



横から覗いてきた顔は、

曖昧な微笑を浮かべていて。


「…泣いてる?」

「雨だって」


ポツポツと降ってくる雨。

それに、少しだけ感謝した。


「もうさ、過去のことだと思って忘れなよ」

「だから泣いてないって」

「…それならいいんだけど」


そうは言ったけど、周助は分かってたんだと思う。

だから、手を繋いできたんだと思う。


「雨が止む頃までには、元気だしなよ」

「…アリガト」


繋がれた手は、暖かくて。

冷たい雨と反比例しているような気がした。

その手が、離れたって。

明るい私に戻れるように。


頬を伝った幾筋もの温かい物は、

もう流れていったから。



一度も涙を拭わぬまま、

私は家路を辿った。






















S先生、有り難う御座いました。


2003/06/08