* 赤の色 *
「シュウ、見てみて!」
「お、ついに実がなったか?」
シュウが家に来たとき。
私は苺の苗を持って目の前に掲げた。
「ね、可愛いでしょ?一個だけだけど真っ赤になったんだよ」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
この苺の苗は、この前シュウに貰ったんだ。
おばさんが園芸が趣味なんだって。
「ね、これ食べようよ!折角なったんだから」
「食べようよって…一個しかないだろ?」
「だから」
私は苺を茎から摘み取ると、
その一端を咥えて口を突き出す。
そういうことか、とでも言いたげに
少し困ったような苦笑を浮かべて、
シュウはその顔を近付けて来た。
苺の赤。
唇の赤。
頬の赤。
全ては、口一杯に広がる甘酸っぱさの中に消えた。
真っ赤で艶々で甘酸っぱい苺でした。
(こっそりってかどうどうと大稲)
2003/06/07