* うるさいな。 *
それは、自習中に起こったことでした。
「それで、その後どうなったと思うよ?」
「……さぁ?」
「ここからは最高に面白いぜ?それがな…」
ぺちゃくちゃと喋り続ける向日。
初めは私も一緒になって話してたけど、
さっき勉学に励むと宣言した。
なのに、未だ喋りかけてくるのは何故ですか?
「…ねぇ、向日ぃ」
「ん、どうした?」
「…うるさいよ」
「――」
一瞬走る、なんとも言えない沈黙。
そしてすぐに、弾けたように叫び出す。
わざわざ立ち上がって、私を指差しながら。
「お前ヒドイぜそれ!」
「向日うるさい」
「静かにしとけ」
「集中できない」
「……」
しかし、クラス全員から苦情が来てしまい。
どうしようもなくなった様子で腰を下ろした。
「なんだってんだよ。くそくそ…」
独り言を続けている。
…うるさいな。
とは思ったけれど、もう口に出すのはやめた。
お調子者で、お喋りで。
そんな君が結構好きだったりするから。
ブツブツと何かを唱え続けてるのを見て、
つい、ぷっと噴き出してしまった。
「…何笑ってんだよ」
「なーんでもない」
不満そうな顔でこっちを見てきているのを知ってて、
私は敢えて微笑を浮かべつつ問題を解き続けた。
チラチラと私の顔を気にしながら問題に取り掛かる君を見て、
もう一度心の中で笑った。
居なくなったら寂しいかもなって。
2003/06/04