、21歳。

某大学に通っているこれでも一応学生。

彼氏有り。

といっても、相手は中学生なのだけれど。











  * 瞳の奥に *












携帯にメールが入ったのは、午後の2時ごろ。
内容は、用件のみの簡単なもの。

『良かったらこれから会わない?
 実は今日誕生日なんだ』

誕生日だと言うことを初めて知らされて、
驚いたような拍子抜けしてしまったような。
でも、聞いたからには祝わないわけにはいかない。

『それじゃあ学校終わったら行く』

そんな簡単なメールを返して、
私は携帯をパチンと閉じた。




私の彼氏というのは、
青春学園中等部に通う、乾貞治君。
友達から紹介というような形で知り合った。
中学生というからどんなものかと思ってみれば、
会ってみればどっちか年上か分からない。

スラリとした長身。
低く澄んだ声。
奥の読めない表情。

なんとなく神秘的さを感じてしまいそうな、
そんな少年だった。

…少年っていう表現も、合わないかな。




夕方。
向こうが部活から帰るのとどっちが先か
微妙な時間だったけれど、
私は直接貞治の家に向かった。

チャイムを鳴らすと、数秒後にドアが開けられた。

「上がって」

こんにちはとかそう言う挨拶もなしに、そう促された。
私は笑顔を向けて、お邪魔しますと一言述べて
家の中に入れてもらった。

「結構久しぶり?」
「約3週間ってところかな」
「休みの日予定が合わなかったからね」

そんな話を交わしながら、貞治の部屋に上がる。

「やっぱり、今日も誰も居ないって訳?」
「ご察しの通りで」

今まで、貞治の家に来てご家族の方にお会いしたことはない。
二人とも働いてて帰ってくるのが遅いんだって。
だから、ここに来るといつも二人きりだ。

「そういえば、今日誕生日だってね」
「ああ」
「ごめん、突然だったから何も準備できなかった。
 埋め合わせは今度するから。ね?」

私は方目を閉じて手を前に出した。
勘弁ね、のポーズ。
そうすると、貞治は眼鏡を白く光らせて言った。

「…別に、埋め合わせは今日で構わないけど」
「え、っ―――」

そのまま、私はベッドに押し倒された。
突然の事態に、それは驚きましたさ。

「さだ、はる…?」
「そろそろ体験していいころだと思うけど、どう?」

体験するって言うのは、それはつまり・・・ってことですよね。

余りに積極的なこの人に、
私は溜め息をつけずには居られなかった。
別に呆れたわけではなくて、
なんだか感心というか、
小さな不安を吐き出したかったというか。

「本当に、年下とは思えないね、貞治は」
「実際は何歳違うか分かってる?」
「分かってるから言わないで…なんか憂鬱になる」

片手では数えられない年齢差。
別に、それに距離感じてるとかそんなことはないけど。

上から私を押さえ込む貞治。
圧倒的な力の差に、少し息を漏らしたくなる。

他にも、手首を握られた大きな手とか。
すらっと長い手足とか。
奥の見えない度のきつい眼鏡とか。
全部、全部。


「貞、治…」

服のボタンを外されて、前が開ける。
体中から熱が出るような恥ずかしさに身を捩ると、
そのまま気にせず唇が当てられる。

不思議な感触に酔いしれる。


「…ぁ、やっ…」
「いいね、その声。そそるよ」
「ヤダ、貞治…」

いつの間にか自分の目には涙が溜まっていた事に気付いて。
そこには、貞治だけが映ってるんだろうって。

貞治の目には、ちゃんと私が映ってるの?

「綺麗だよ」
「ん、ゃぁっ…」

体中を這い回る手。
揉み解された胸。

全身を愛される。
だけど、隠せない不安。

貴方の眼に、私は映っているの?


 瞳の奥を見せて。


「感度上々だね。今度データに加えなくては」
「何、そのデータって…」
「ジョウダンだって」
「もう…」

こんなときにも余裕綽々な態度。
とても6歳年下とは思えない巧みな手際。
一体どんなところでこんなこと覚えてくるんだか。

「……やぅっ!」
「凄いね、ココ。グショグショ」
「イジ、ワル…」
「悪いね、生まれつきなんだ」

そう言って貞治は笑った。
指は私の秘部に押し当てて。
少しずつ中に指を侵入させながら。

「あ、あぁ…」
「簡単に2本呑みこんだよ」
「こ、コメントは、いいから…」
「了解」

不思議だ。
この乾貞治という人間は。
奥が読めないんだ。
何か、不思議なものを持っている気がする。


 瞳の奥を見せて。

 貴方の眼には何が映るの。


「もう、いいだろ」
「っぁ…ひぁっ!」
「…いれるよ」
「ん…」

ついに自分のモノを取り出した貞治。
初めて見るそれに、少し息を飲んでみる。
喉の奥でした返事。
それに対して、貞治は不敵な笑みを浮かべる。

「力抜いて。出来る限り痛くはしないようにするから」
「うん…分かった」

息を大きく吸って、全て吐き切った。
深い深い深呼吸。

目を大きく見開いて、手を伸ばした。


「…きて」
「お望みのままに」

貞治は一度私にキスをした。
伸ばした腕を首の後ろに絡める。

目の前まで来た貞治の顔。
この位置からは逆光になってしまって、
余計表情が読めない。


 瞳の奥を見せて。

 貴方の眼には何が映るの。

 覗かせて。


 その深い闇の中を。



「……やぁっ!!」
「いいね、この締め付け」
「サダ、ハル…ぅ、ああっ!」
「落ち着いて。もうすぐ慣れてくるから」

貞治は出来るだけ痛くないようにしてくれているのが分かる。
それでも痛みは、消えないけれど。
だけど…きっと、幸せだから。

「…もう少し、いいかな」
「うん、平気……んっ」
「キレイだよ、
「サダハル……っ!」

中で疼く痛み。
少しずつ奥を捉えていく。
辛い痛みじゃない。
辛くはないのだけれど。
やはり、痛みというのは痛みであるからして。

「ハァ…ぁ、うっ!!」
「――」

『カシャーン…』


痛みのあまりにもがいた私。
その際に振り上げた手は、
貞治の顔の正面を掠めていって。


「あ、ごめ…」
「…参ったな、これじゃあの顔が見えないよ」

初めて見た、素顔。
隠すものの何もない顔。

…初めて?

そうか、初めてだったんだ。
ここにして、漸く気付く。

「私は、見える…」
「…嬉しい?」
「ウン」
「じゃ、構わないかな」

言うと、貞治はそのまま身体を奥に進めた。
痛みには少しずつ慣れてきて、
快感の波が押し寄せてくる。

「さだっ、はる……!」
…」


詰め寄ってきた快楽。
私がそれに雪崩れ込む。
少しして、中に何かが注がれた。

そのときの貞治の表情も、全部見た。



  **



「で、どうでした初体験は」
「あーなんか感無量って感じ」
「感無量ね」

行為後、私達は普段となんら変わりない様子で。
といっても、随分心境は違うのだけれど。

いつの間にか眼鏡を掛けなおしている貞治だったけれど、
今ではそれ越しでも顔が見える気がするんだ。


「貞治」
「ん?」

飛び切りの笑顔をして、言い放った。


 「ダイスキ!」


それに対しての返事は、素っ気のないものだったけれど。

「…それを言う確立は86%だった」
「何それー!!」

でも、それも照れ隠しなのかなって。
今ならそう思える。



 綺麗な貴方の瞳が、大好き。






















そんなバカな!(こら)
乾の恋人は大学生って設定、少なくないらしいですね。
分かるような分かるような。(分かってるんじゃん)

寧ろ乾が犯罪者っぽくて◎。(マテコラ)

こんなんだけど一応誕生日祝です。
おめでとう、乾。


2003/06/03