* 歩き続ける *
余所見をしながら歩いていた私が馬鹿でした。
「キャァ!」
「わっ」
階段を下りているとき、
何者かに肩をぶつけてバランスを失った私は、
そのまま地へと落下した。
「い、いったぁ…!」
「大丈夫ですか!?」
ノンストップで5段ほど落ちた私。
立ち上がろうとする。
あ…ダメだ。足首痛い。
「ちょっと…捻った、かも」
「ごめんなさいです!僕の所為で…」
「いや、君の所為じゃないよ」
そこに居たのは、なんとも可愛らしい少年で。
一年生かしらね。喋り方に特徴を感じる。
「保健室行ったほうがいいですよね!肩貸しますから…」
「え、大丈夫だって!一人で行けるし」
「でも捻挫したときは無理しない方がいいです」
そして結局、私は肩を借りて立ち上がった。
申し訳ない気持ちと、気恥ずかしい気持ちを感じながら。
ゆっくりと、廊下を歩き始めた。
「ごめんなさい、僕背が低いから…あんまり意味ないかもですけど」
「ううん、随分助かる」
向こうも気を使ってるのが感じられて、
ゆっくり、ゆっくりと廊下を歩いた。
テニス部のマネージャーやってるから包帯巻いたりは得意です、
とその子は言った。
明るい笑顔のいい子だな、と思った。
自分より少し低い位置にある肩に体重を預けながら、私は歩いた。
心遣いを胸に感じながら、
ゆっくり、ゆっくりと歩き続ける。
気を付けてね。過去のお礼をお裾分け。
2003/05/30