青春学園男子テニス部。
過去からかなりの大会に出場し、
多くの実績を持つその部。
その実力を確かめ、そして調査をするべく、
今日も他校から多くのものが偵察にくる。

そして、この男もそのまた一人…。


「見つけましたよ、乾君…」











  * イージーオアディフィカルト *












「今日の朝練で使っていた海堂のバンダナはオレンジ。昨日使っていた
 緑のバンダナにはほつれが見えたため恐らく暫くの間は…」

青学3年乾貞治。
今日も元気にストーカー。
滑らかにノートにペンを走らせるそのさまは、
決まっているといえば決まっているが、
キモイといえば正直キモイ。(酷)

そして、その男を追う者がまた一人。
同じく青学3年不二周助。

「やあ」
「…不二か」
「今日も海堂君のこと追ってるの?」
「そういうことだな」

なんとも微妙な関係なこの二人。
前のように乾が不二を避けることはなくなったようだ。
寧ろ仲が良いようにさえ見える。
一体、あの日体育倉庫でなにがあったのか…
という点には触れないでおいていただきたい。

まあとりあえず意気投合したのかなんなのか、
仲はいいようだ。
詳しいことは後ほど触れるので今は敢えて伏せておこう。

「乾、前も警告したけど、あんまりにしつこいと逆効果だよ?」

不二は薫専用丸秘データNo.101と書いたノートを見、
溜め息交じりの息を吐いた。
それに対し、乾は鼻息交じりに話を始める。

「分かっている…分かっている、が!しかし!バット!アバー!!
 マイキューティーハニー薫のことを想うといてもたってもいられず…!!」
「まあ、君らしいといえば君らしいけど」

暴走を始める乾。
それをこんなにもすんなりと交わす不二。(恐るべし)


何を隠そう。
実は最近、この二人は付き合っている。
信じられなくとも、それが真実。
傍から見れば乾→海堂だろうが不二×乾なのだ。
しかし飽く迄も乾は攻なのだ。
意味不明で泣けてきそうですがそれが現実。
しつこいようですが真実なのです。

「それじゃ、頑張ってね。応援してるから」
「ああ、またな」


…信じられないかもしれませんが、
この二人は付き合っいるんです…多分。




   **




時は流れて放課後の部活。
今日も元気に芋ジャーで活躍するものが一人

「今日の偵察人数は37人。前日に比べて約3.8%上昇…ん?」

溢れかえる人の波の中、乾は見覚えのある人影を見つけた。

白いワイシャツに茶色のズボン。
少し癖のある黒い髪。
肘を抱えるようにして立つその姿。
そこに居たのは…。

「聖ルドルフの観月…」
「んふっ。憶えていただけているなんて光栄ですね」

フェンス越しに、観月は乾に歩み寄った。
乾は軽く眉を顰める。
正直な話観月があまり得意ではなかったのだ。

「なんだ観月、偵察か?それとも練習試合の申し込みか?
 竜崎先生は基本的に今は練習試合は断っているぞ」
「随分冷たいですねぇ、乾君。
 僕は貴方のことが忘れられずにわざわざここまで足を運んできたというのに」
「……なんだって?」

観月は右手の人差し指に髪を絡めると、
クルクルと捻りながらいった。
その発言に、乾は更に眉間に皺を寄せた。
(それはもう、手塚並に)

すると、観月は突然少女漫画の乙女主人公のようなポーズになって言い始めた。

「そう!それはもうまるで恋…!
 あの日一度会話を交わしてから、
 僕はもう貴方のとりこ…嗚呼っ」
「(こ、コイツはヤバイ…!)」

観月のやばさを乾は本能で悟った。
(まあ、本能も何も普通にヤバイのだが)
乾はいつも自分が海堂にしていた行動のやばさに
気付い…てしまうとこの話が成り立たなくなってしまうので、
気付かなかったことにしよう。(そんないい加減な話/最悪)

とりあえず観月はヤバイと思った。
乾でさえ思うのだから相当のやばさだ。(失礼)

乾が一歩後ろに引いた…その時。


 「なにやってるの?」


その一言は、とても明るい声で。
しかしそれが心から明るい声だったのか、
黒さを押し込めて滲み出ている明るい声だったのか、
それは乾には判別できなかった。

果たしてそれは救いの天使なのか。
それとも地獄へ突き落とす悪魔なのか。


 満面の笑みにて黒天使(ブラックエンジェル)不二周助降臨。


「おやおや、これは不二周助くんじゃないですか」
「……誰?」
「なっ…!…ふ、フフ。その程度の作戦で
 動揺する僕だと思ってるんですか?」

言いつつ、口元がヒクヒクと引き攣っている観月だった。
本当に忘れている不二の(惨い)発言を、
自分に対する嫌がらせだと受け取って勝手に怒っていた。
(観月が喋っている間、不二と乾の間で
 「本当に誰だっけ?」「ルドルフの観月だよ」という会話が
 繰り広げられていたが、観月の耳には届いていない)

「観月……観月?」
「ん、なんですか?」

漸く思考回路内から観月というデータを読み取った不二。
その瞬間…


  開 眼 。


それはもう、観月の前では瞬きすらしねぇ、な勢いで開眼だった。
第三の眼も開くぐらいの勢いで。(※ありません)


「へぇ、それで、その観月君が何で乾と話してるわけ?」
「別に誰と喋ろうと僕の勝手でしょう?それとも、
 乾君が貴方のものだとでも言うつもりですか?」
「うん」


 ・・・・・・間・・・・・・。


「…はっ!今なんと言いました?フ・ジ・ク・ン!?」
「だから乾は僕のものだって」
「な、なにを言うんですか!その手には乗りませんよ。
 乾君は確か海堂君のことが…」

頭を抱えて苦悩する観月。
対して二人は…。

「乾は僕のもの」
「俺のハートは薫のもの」
「でも付き合ってるんだもん」
「「ねー」」

二人は、ペンギン立ちになって体を傾ける状態で同意した。
(意味が分からない方はこの辺の描写は読み流していい)
(とりあえずキモさ漂う状態だったことは分かってほしい)

観月はその場にしゃがみ込んでいた。

「そんな…ハズはない。僕のデータに間違いは…っ!」
「間違いだらけじゃない」
「はは、その辺にしといてやれ」

既に和みムードの不二乾。
耐え切れず観月は立ち上がると不二を指差していった。

「大体、貴方は手塚君狙いじゃなかったのですか!?」
「……」

一瞬走る沈黙。
観月は自信満面に言う。
対して不二は…。

「さあ、どうなんですか?」
「そうだけど」
「―――」

観月は口を開けて固まっていた。
乾は既に承知済みだったのか、特に反応は示さない。

不二は飄々と言ってのけた。

「僕は手塚のことが好きだよ。でも乾は僕のもの」
「そ、そんなバカな…!」

「俺は攻だぞ」
「でも右ね」

既に不二は人知を越えていた。
ひたすらに苦悩する観月。
不二と乾はまた和みモードで会話を続けるだけだった。
(その割に内容がえげつないことは伏せ)


「く…くそぅ!憶えてなさい、青学不二君。
 乾君は…僕が必ず奪いに来ます!!」
「俺のハートはカオルのものだって」
「乾は僕のもの」

よもや他のものの言うことは無視して
自分の意見を主張し続ける二人を背中に、
観月は涙ながらに青学から去っていった。マル。


「全く、なんで観月なんか…」
「俺が聞きたい」
「絶対アイツのものになんかさせないからね」
「はは、心配性だな不二は」

乾はコツンと不二の額を小突いて見せた。(キモイ!←こら)
なんだかピンクな展開全開の二人だった。


「手塚、今日の練習メニューのことだけど…」
「海堂ー!打ち合いでもやろうぜー!」

少し離れたところでの会話を聞きながら、
二人は思い思いに呟く。

「大石は英二狙いだったよね。フフ、手塚は僕が手に入れるから…」
「くそぅ桃城め!薫は俺が必ず手に入れる…っ!」
「ね、乾。今日の帰りどっか寄ってかない?」
「構わないぞ」
「それじゃ、約束ね」
「ああ」


コートからは、ボールの打ち合う音が聞こえる。
その時、手塚の号令が掛かった。


「青学テニス部集合!」



  青学男子テニス部は、今日も元気です。






















恐ろしくふざけた作品になってしまった…!(ひぃ)
だって…リク内容がリク内容なだけに。(苦笑)
しかもギャグ希望とのことで。
『ストーカー規制法』と同じ設定で行かせていただいた。

なんだか文中に突っ込みとか多いですが。
これはそういう文体ということで。

なんか謎ですが、桃×海←乾←不二/観月を、
観乾真ん中BD祝いで書かせていただいた。強制終了。


2003/05/30