* もしもの話 *
「シュウはさ〜」
「ん?」
「もし、私が身長あと5cmで良いから高かったらどうする?」
「……へ?」
相も変わらない私の突然の思いつき的発言。
シュウは戸惑いの表情を見せる。
「どうするって言われても…」
「それから、もし…顔もアイドルみたいに可愛くて、
勉強も出来てスポーツも得意で歌って踊れる…」
「ちょ、ちょっと待て!落ち着け」
どうどう、と宥めるシュウ。
私は言葉を止めた。
軽く溜め息を吐いてから、シュウは訊いてきた。
「なんでそんなこと訊くんだ?」
「え……だって、もしそうだったら…」
「もしそうだったら、何?」
綺麗な瞳に覗き込まれて。
私は微かに頬が赤らむのを感じながら答えた。
「シュウは私のこともっと好きになってくれるかなって」
答えた後は、一瞬の沈黙。
それを破ったのは、シュウの笑い声。
「…そういうことか」
「わ、笑わないでよ!」
「…じゃあ、逆に訊くぞ」
「う?」
ふためく私にシュウからの質問。
何かと思いきや…。
「もしも、俺がテストで一問も間違えないような秀才で、
且つ軽々と全てのスポーツをこなすような奴だったら…どう思う?」
「げっ!そんなのシュウじゃない!!」
それはどういう意味だよ、とシュウは苦笑いしてたけど。
…そっか。
そういうことなんだ。
「今のままが、一番ってことかね」
「少なくとも、俺はそう思うぞ」
「…私も」
腕の中に潜り込んで、心に深く感じた。
今の貴方が、好きなんだから。
今ある姿を、受け止めたいと思うんだ。
想像上の、もしもの話なんかより、
もっと素敵な理想が、そこにある。
有りのまま貴方が好きだから。
飾らない素顔の貴方が好き。
(大稲でいかせていただいた)
2003/05/26