* 堕ちてゆく *
「おっはよー」
「おはよ、菊丸」
朝の何気ない挨拶。
たったそれだけ。
同じクラスで隣の席。
たったそれだけ。
私が菊丸を意識するようになったのは、いつだったかな。
ほう、と小さく溜め息を吐く。
隣の席のその人は、ドタバタと親友の席へ向かった。
「不二ぃ〜!宿題見せてー!!」
「ダメ。それじゃあ自分のためにならないでしょ」
「にゃーイジワル!!」
明るくて元気な貴方。
こんな見方をしている自分が間違っている気さえしてくる。
「…っていうか、本当はね、僕もやってないんだ」
「あ、そうにゃんだ…」
「宿題だったら、君のお隣さんはやってあると思うな」
何気なく会話を聞いてた私。
自分のことが話題に出たようで、そっちを向く。
ちらりと、不二が笑顔を向けてくる。
直後、菊丸は「宿題見せてくりくり〜!」とか叫びながら突進してくる。
「今度なんか奢るからさ、お願いっ!」
「そこまで言うなら仕方ないけど…」
そんなことを言いながら、どこか喜んでいる自分がいる。
貴方の笑顔がそこにあるだけで。
太陽のように明るい貴方。
心に闇を宿す自分。
こんな私だけど、笑顔を向けてくれて有り難う。
どこまでも、堕ちていきます。
笑顔に堕ちる。
2003/05/24