* 初夏の出来事 *
それは、初夏のある日の出来事でした。
照りつける太陽が眩しい、そんな日のことでした。
ピアノの演奏会へ出かける私。
余所行きの服を着て家を出た。
駅に着いて。
偶然そこに居たのは、クラスメイトの一人でした。
「あ、桃城」
「おっ、偶然だな……ぶっ!」
「?」
私の姿を見るなり噴き出すその人。
眉を少し顰めて睨み付けてやると、
わりぃわりぃと笑いながら言ってきた。
「お前もそういう服着るんだなと思って。ああ面白ぇ」
「なっ!笑うことないでしょうが!!」
突然恥ずかしくなって、顔が赤くなるのを感じる。
ほぼ無意識的に、片手に持っていた鞄を前で両手で持つように変えた。
私が着ているのは、黒をベースとしたロングスカート。
確かに短めのスカートの制服でくるくる走り回って
パンチラならぬブルマチラ(?)をかましてる私には、
無縁にも感じられるような服装かもしれない…。
だからって、笑うことなんかないのに…。
自然と突き出ている口。
不機嫌なときの癖だ。自覚有り。
不機嫌というか…いじけ気味というか。
想像以上に傷付いてる自分に気付いた。
そんなとき、桃城は笑顔を見せて言う。
「冗談だって。似合ってるぜ」
歯を見せてにかっと笑うと、到来した電車に乗っていった。
電車の窓からまた笑顔を見せられて、何故か私は会釈してた。
赤い顔を伏せたいという気持ちから来た無意識な行動かな、と思いつつ。
深呼吸してホームの反対側に電車が来るのを待った。
こっちへ来て初スカートだったり。
2003/05/23