* 昼下がりのシンデレラ *












授業の合間の休み時間は昼休みと違って人は少ない。
そんな場所と時間帯を選んで、
小学生みたいな遊びで盛り上がる私たち。
誰が一番遠くへ靴を飛ばせるかという単純な遊びに全力をかけている。
さあ満を持して次は私の番!

「振り子打法ー!」

それは野球でしょと突っ込まれながら
上履きを半脱ぎにした足を、
後ろから前へブンと振り上げた。

上履きは空高く真っ直ぐと宙を舞…わずに、くるくる回りながら大きく横へ逸れた。

あ。

「「ああー!!!」」

フェンスに駆け寄る友人たちに遅れて私もフェンスにしがみつく。
しかし角度的に地面は見えそうにない。

私たち3人が呆然と固まっているとき、遠くでチャイムが鳴る音がした。

ど、どうしよう…。

「とりあえず教室戻って、授業終わったらダッシュしよ!」
「てか私片足靴下なんだけど!?」

肩を貸してもらって、ケンケンしながら教室に帰ることになった。






幸いなことに、次の授業は少し早めに終わって昼休みに入った。
いつもは楽しくお弁当を持ち寄って机をくっつける私たちだけど、今日はそうはいかない。

「見つけて拾ってくる!」
「なかったら来客用スリッパ持ってくるから」
「ありがとー!ほんとごめんね〜」

友人二人が教室からパタパタと駆け出すのを手を振って見送って、
廊下際の一番後ろの席、教室に残された私は足をプラプラ。

無事に見つかりますよーに…。

祈っていると、正式に昼休みの始まりを告げる
12時丁度のチャイムが聞こえてきた。

その直後、廊下から声を掛けられる。

「こめん、ちょっと聞きたいんだけど」

大石!?

まさかの声を掛けてきたのは私の好きな人。
席替えでこの席になってから、教室移動のタイミングとかで
その姿を拝むことができてラッキーと思うことは多かったけど。

よりによってこんなときに!
片足しか上履きないの気づかないでくれ〜!

心の中では切実に祈って、
顔では笑顔で「どうしたの」と返して、
足首はクロスさせて裸足の足を隠すようにする。

しかし、大石の目線が明らかに私の足元に注がれてる。
バ、バレた!?
なんで!!
普通わざわざ見ないでしょ!

「あ、だったのか」
「え」

私の足元ばかりを観ている大石の顔から視線を外し、
大石の手元にそれを移す。
そこには私の上履きがあった。

「え!!!」

飛び上がりたいくらい驚いたけど、
片足裸足な私はそのまま座り尽くしているしかない。

「さっきの休み時間の終わり間際、保健室の外に上履きが降ってきたんだ。
 クラスとイニシャルだけわかったけど、誰かわからなくて。
 時間がなくて探しに来るのが今になっちゃってごめんな」

そう言うと大石は私の足元に跪くように上履きを下ろして「はいどうぞ」と言った。
確認するまでもなく、それは私の足にピッタリだ。

恥っっっっっっっっっっっず!

「ありがとう……マジで恥ずかしい……」
「人に当たったら危ないし気をつけるんだぞ」
「はい…本当にすみません…」

熱くなった顔を両手で覆ったまま頭をコクコクと頷かせる。

「持ち主が無事見つかって良かったよ」

微笑む様はまるで王子様。
まさか、「このまま一緒に踊りませんか」なんてことにはならないけれど。

「大石…」
「ん?」
「…このあと一緒に靴飛ばしやりませんか」
「え……やらないよ」

ドン引きしている様子の彼は、私の意図に気付くはずもなし。

彼は王子じゃないし私は姫にはなれない。
だけど、落とした靴がきっかけを生んだ、ある日の正午のことでしたとさ。


To be continued...?
























別に続きを示唆したいわけではなく
おとぎ話っぽい雰囲気を醸したかっただけですw

でもうまくいってほしいね…
今のところ大石に気はまったくなさそうだけどね…
そこから始まるLOVEがあってもいいよね…(あるか……?)


2022/07/12-2023/08/28