「英二って恋バナにノリ悪いよね」 休み時間になると机の周りで自然と盛り上がっていく雑談。今日は口を挟む余地がなさそうだと、高い声で盛り上がる女子たちの言葉に合わせて首を右へ左へ振るだけの人形のような動きをしていたらそんなことを言われた。 誰が誰のこと好きって聞いても、ふーんそうなんだ、としか思わない。オレだって、ふわふわなオムライスとかぷりっぷりのエビフライとか熊の大五郎とかテニスとか体育の授業とか、好きなものはいっぱいあるけど……好きな人の話だけそんなに特別なの? 「だってオレ好きな人できたことないし」 「えー、マジで?」 「隠してるんじゃなくて?」 「隠してないよ。単に恋愛とかキョーミないの! 男子なんてそんなもんだよなぁ?」 天井より更に後ろを見るようにのけぞって、斜め後ろに立ってる奴らに問いかけた。そしたら、みんな目線を逸してもじもじしてる。「まあな」とか言ってるけどなんか顔赤くない? もしかして隠してるってこと? いつも男子だけで喋ってると、昨日の野球の試合結果だとかバラエティ番組のネタだとか今週のジャンプ何が面白かったとかそんなばっかなのに、そうなんだ言わないだけでみんなには好きな人がいたりするんだ。へー……。 「英二だってモテてるの気付いてないの?」とか言われたけど、本当に「キョーミないや」。これが真実。 (ま、オレはテニスのことで頭イッパイだし) 誰が誰のこと好きとか、誰かがオレのこと好きとか、そんなことよりも今日の放課後のダブルス練のことを考える方がオレはワクワクするんだ。 ** 「今日はいい練習できたね!」 上機嫌で声が弾んでいるのを自分でも感じる。大石は横で穏やかに「そうだな」って笑った。取り留めのない雑談のようで反省会も兼ねてる帰り道の会話。もっとこうすれば良かったかなとか、次はこうしてみようかとか。オレはこの時間が大好きだ。 そのやり取りの最中に、ふと思い出した。今日の休み時間の談話を。オレはとても興味を示せなかったあの話題。大石はどう感じるだろう。 「大石ぃー……」 「ん、どうした」 「今日クラスでこんな話になったんだけどさ」 オレは休み時間の会話を要約して大石に伝えた。クラスメイトたちが好きな人の話で盛り上がっていたこと。オレは乗り切れなかったこと。普段は別の話題ばかり上げていた奴らも実は好きな人がいるっぽかったこと。 「なんか、疎外感っていうか? オレにはよくわかんなかったなーって」 大石がどんな反応をするかが気になった。こういうとき大石はいつも、しっかりと考えた上でオレが欲しい答えをくれる。同意でも反対でも、大石はどう考えているのか。 チラ、と横にある大石の顔を見る。大石は真剣に考え込んでいるのか眉間にしわを寄せていて、少し首を俯かせたまま喋り始めた。 「俺は……そういうのは人それぞれだと思うし、英二みたいに好きな人ができたことないっていうのも、変ではない……と思う」 「だよねっ?」 その一言にオレは思わず大石に人差し指を向ける。人を指差すなって何回も怒られたっけ、って思い出してその指を下ろした。でも大石の言葉が嬉しくってオレはじっとしてられなかったんだ。 初恋のタイミングなんて人それぞれだよね。いつか、がいつ来るのかはわからないけど、とりあえず今はまだ来ていない。それだけ。 今は誰かと付き合うとか想像できない。どういうタイミングで恋って芽生えるんだろう。逆に、付き合ってみたらその気持ちがわかったりすんのかな。 人って、どうやったら好きになるんだろ。 「大石は好きな人できたことあるの?」 聞いてみた。大石は目を大きく見開いてのけぞって、右へ左へ上へ視線を泳がして、その時点で答えはわかった気がするけどすごくすごく長い間があって、ようやく観念したのか返事が聞けた。 「…………ある、けど」 「どんな子? オレも知ってる子?」 更に質問してやると、さっき以上に大石はうろたえて、目線だけじゃなくて口元まであわあわさせた。答えにくいんだったらいいよ、って言おうとしたところで先に大石が声を発した。 「じ……実は俺、オトコ」 のことが、好き、なん…………だ。 その言葉尻がすぼんでいくのと反比例するみたいに大石の顔は真っ赤になった。 「へー、そうなんだ」 「……気持ち悪いとか思わないのか?」 「べつにー? 大石だってさっき言ってくれたじゃん、人それぞれだって」 いつ好きになるかも、誰を好きになるかも、人それぞれ。それでいいんじゃないの? 気持ち悪がられる覚悟をしていたのか、大石はホッとした表情に変わったように見えた。気持ち悪がるどころか、オレは興味津々で話題を広げる。 「じゃあ相手が男だとして、今は好きな人いるの?」 「えっ、あ、いや……居ない、かな」 「ふーん」 返事の歯切れが悪くって、これは何か隠してるなとも思ったけど。オレはそのときちょっとしたアイディアを閃いていて、大石の態度は気にせず「じゃあさ」と話を進めた。 「付き合ってみない、オレたち」 オレの思い切った言葉に対して、大石からは全然返事が来なくって、これはやらかしたかなと思った直後に鼓膜が破れるくらい大きな声が聞こえた。 「えっ!?!?!?」 「わっビックリしたー!」 「ごっ、ごめん……」 「まあ大石が本当はほかに好きな人いるなら別だけど」 「…………」 「なんだいるんじゃん」 「あ、いや! 居ないよ!」 終始焦った様子で、最後に好きな人の存在をはっきりと否定すると、大石はがしっとオレの手を掴んできた。 全然、ロマンチックな告白って雰囲気ではなかったけど。 「付き合おう」 「オッケー!」 こうしてオレたちは付き合うことになった。このまま手繋いで帰る? って提案したけど真面目な大石は乗ってこなくて、また今度二人きりになれる場所でゆっくり話そう、ということでこの日は解散した。 ** 部活が早めに終わった日。コンビネーションが特別うまくいった日。逆にダブルス練がなくて物足りなかった日。不定期だけれど週に一回から二回程度のペースは守って、オレは大石の部屋に訪れていた。 大石の家はうちとは違って静かだ。でもオレたち二人で一緒に居ると話題が尽きないからその静けさを意識することはあまりなかった。それが最近は沈黙が訪れることが度々あった。水槽のポンプの音がこんなに響いてたんだなって気付かされるくらいに。 静かな部屋に、コポコポと水中に泡が生まれる音がBGMのように流れ続けてる。そこに、チュッ、チュッと大石とオレの唇同士が吸い付いては離れる音。 くすぐったくなってきて、イタズラしたくなって、舌を伸ばして顎から鼻まで伝わせるようにぺろりと舐め上げた。 「こら!」 「にゃっはは」 さっきまでの静けさはなくなって笑い声が響く。だけど楽しく笑ってるのはオレだけで、大石の表情は真剣そのもので、ふざけた雰囲気になりそうなのを制してくるみたいだ。 「おおいしっ……くすぐったいよ」 再び触れ合わせてくる唇の感触に身じろぎする。居心地の悪さもあってか、気持ちも体もこそばゆくって笑いだしてしまいそうになる。そしてその笑い声も裏返ってしまいそうな変な感じ。 オレの言葉に大石は一旦口を離して、「じゃあもっと刺激強くする?」と言った。えっ何が……と聞くより先、大石の顔が斜めに傾けられて迫ってきた。唇同士は隙間なくピタリとくっついて、大石の舌がぬるりとオレの口内に侵入してきた。オレは驚いて咄嗟に大石の肩を押し返そうとしたけど手首は両方とも掴まれて、逃れる方法は他にもありそうな気がしたけどくちゅくちゅと響く音のせいでパニックになって、抵抗する力も奪われてしまった。 付き合うって、こういうことするんだ。人を好きになるって、こういうことを、その人としたいって思うことなんだ。オレは大石のこと好きだけど、こういうことするのは、コワイような気もして。だけどその気持ちに反して、体の奥底から何かが湧き上がってくるみたいな……。 (ん〜〜……!) どのくらいそうしていたか、ようやく口が離されて久しぶりに新鮮な空気が吸えた。唾液が一筋伝って、それを親指で拭うと大石は「くすぐったくなかっただろ」って笑った。くすぐったくは、なかった、けど……。 「オレのムスコがムズムズしてきちゃった」 前屈みになるオレを見て大石はハァと困ったようにため息を吐いた。 「やめてくれよ……」 「だって生理現象じゃんか。大石はならないの?」 問うと、大石はオレの頬をそっと撫でてきた。 「オレはキスしてるだけで幸せだから」 目線は背けたままの大石は呟くような音量でぽつりと言った。その言葉を頭の中で反復する。 (幸せ……) キスという行為を……この刺激を快感と感じているかなとは思うけど、幸せかと聞かれるとどこか違うような。 頬を撫でられたまま、目が合った。顔が近付いてくるとなんだか気まずくってすぐに目を閉じてしまうけど、そのまま薄目で大石の様子を窺った。大石は、見たことないほどとろんととろけそうな、熱にまみれた目線を向けてきていた。 (恋する乙女の目じゃん……) 男のこと好きって言ってたの、本当だったんだなと改めて認識する。その対象としてオレのことも例外ではないということも。 オレは何に対して、誰に対してこんな目線を向けることができるだろう。 そう考えたら、やっぱりオレに恋愛は無理な気がしてきた……大石以外。大石以外とはこんなこと、とてもじゃないけどできない。 ** 湯気が立ち上る浴室の中、シャンプーでもこもこと髪を泡立てる。目を閉じると、夕方の出来事が頭をよぎった。いつの間にかそれが当たり前になってたみたいに、今日も大石とキスをした。何回も何回も。そして今日は、もう一歩大人なキスもした。そのときに見た大石の顔を思い出す。 (大石いつも、あんな顔してオレとキスしてたんだ……) そう考えたら、何故だか、ちょっと怖くも思えて。 (それに反して元気なオレのムスコ……) あの行為をそのまま続けていたらもっと元気になっていたことは想像がつく。じゃあ大石とその続きまでしたいのか、と考えたらあまりに有り得なすぎて頭をぶんぶんと振り回してかき消した。男同士だとどっち側とかあるって聞いたことがする、とかそういう問題じゃない。無理。大石とそんなことはできない。なら他の誰かとならできるのか、男じゃなくて女なら、年下、年上、色々考えたけど……。 (無理じゃない?) それは、数週間前の悩みと同じところに着地した。オレは人を好きになったことがなくて、人をそういう対象で見ることができない。時が経てば、試しに付き合ってみれば、何か変わるかと期待したけどそれはなさそうだという予感がしている。 (大石とのキスが、イヤだってわけじゃない……と思うんだけど……) 考え事をしながら全身洗い終えて、鏡と対面する。水に濡れて湯気で曇った鏡を拳の小指側でキュキュッと磨く。突き出した唇はわずかに開かせて、ギリギリ前が見える程度に瞼を伏せて、まつげの隙間から薄目に見ながら顔を少しずつ鏡に近づけて――。 (えっ! オレこんな!? キモチワルッ!) 気色悪くなって鏡をババッと手のひらで擦った。 大石からはオレ、こんな風に見えてたんだ。オレには大石が、ああ見えていたみたいに……。 (気持ち悪いとか怖いとか、思ったら大石に悪いって思ったけど……) とても幸せだとは思えない。それを確信したところでドンドンとドアをノックする音が。 「英二ー、お風呂長ーい!」 「うるさいなー、今出るよー!」 もっかい湯船に戻って、ざぶんと鼻が浸かるくらいまで潜って十秒カウントしてお風呂から上がった。 ** 二人で学校から帰って、大石の部屋へ向かう。すっかり習慣化した会合の確認をするべく「このあと大石の家でいいよね」と問いかけた。当然大石は「ああ」って同意の返事をくれると思った、けど。 大石は足を止めた。一歩遅れてオレも止まる。振り返って見えた大石は俯いていた。 「別れよう」 …………は? 理解が及ばなくて次の言葉を発するのに時間が掛かってしまった。 「なんで?」 「本当は英二だって嫌だろう、こんなの」 「別に……このまま続けていいってオレは思」 「英二が!」 大石が声を張り上げるからびっくりして言葉を止めた。普段の大石は、オレが喋ってる間に遮ったりしないのに。 「英二が……このままでいいと思っていることが俺には大問題なんだよ」 そう言って大石は俯いた。 は? 何言ってんの大石。 「大石、どういう意……」 「英二は黙っててくれ!」 荒い声に心臓がドキンと鳴った。オレから問いかけることも許されず。何故かオレが怒られたみたいで。でもわかる、大石が怒ってるのはオレに対してじゃない。その証拠に大石は自分の頭を抱え込んでいる。 (どうしたんだよ、大石) 声に出せないから心の中で問いかけたそのタイミングで、大石は思わぬことを口にした。掠れた声が耳に届く。 「付き合うことになる前からずっと、俺が好きなのは英二だよ」 ――――え? マジで。 ウソでしょ? 「騙してるみたいになってごめん」 それだけ残して、大石は走り去った。 ぽつんと取り残されたオレ。 大石、男のことが好きだって言ってた。だからオレも対象なんだろなとは思った。キスしてるだけで幸せそうだった。付き合う前、好きな人はいないって言ってたけど、本当は隠してるようにも見えた。もしかして、本人を前にしてたから言えなかっただけで、マジで、ホントウに、大石は前からオレのことが好きだったってこと? 「大石……」 思わずその名を呼んでしまったけど、呟くように漏らした声はとても走り去った大石に届くような音量ではなくて、そしてオレもその背中を追いかけることもできずに、立ち尽くしたまま混乱が収まるのを待つしかできなかった。 (大石は、オレのことが好き。オレも大石のことが好き。だけどオレのスキは、大石のスキとはきっと違う) さっきオレは「このまま続けていい」って言っちゃったけど、そのすれ違いを感じていないわけではなかった。キスするのがちょっと怖いと感じてしまったことも事実だ。 (無理だったんだなー……) 腑に落ちた気がして、ゆっくりと自分の家に向かって歩き始める。 無理だったんだよ。オレは好きな人ができたことなくて、付き合ってみても変わらなくて。大石は好きになる対象が同性で、周りとは違うと気付いた上で変えられないほどの想いを抱えてて。 その好意が初めからオレに向いていたとは、気付けてなかったけど。 でもよく考えたら何の不思議もないのか。だってオレたちって元々気の合う親友で、部活では最高のダブルスパートナーで。一緒に居るのが楽しくって、喧嘩だってして、嬉しいだけじゃなくて苦しい思いを共有することもあったけど、その時間ですら特別で……。 「――――」 胸に引っかかるものがあってピタリと足を止める。 (無理だった、のかな?) ホントウに? と自分に問いかける。 大石の気持ち、大石への気持ち、考え直して、決心したオレは方向転換をしてその場を駆け出した。 ** 扉の前で、深呼吸。これからどうなるのだろう、オレたちは。 「大石、入るよ」 ノックして部屋のドアを開けると大石は制服のままで机に向かって座っていた。オレの存在に気付くと焦った様子で立ち上がった。 「英二、どうして……!?」 「おばさんに入れてもらった」 「そうじゃなくて……」 結局来てしまった、ここに。大石の部屋に。付き合い始めて以降訪れるのが習慣化していたこの場所に。さっきは「別れよう」と言われてしまったけれど。オレ、まだ「うん」って返事してないし。 床に座り込むオレに合わせて大石も床に下りてきた。オレたちは向かい合う格好になる。 「さっき大石に『別れよう』って言われて、オレ考えたんだ」 「うん」 「オレは、大石がオレのことを好きって言ってくれてるのと同じ意味では大石のことを好きになれないと思う」 「……うん」 「キスして幸せとか思えないし、てか正直……ちょっと苦手かも」 「やっぱり、そうか……」 察していたのか、大石は納得したような顔を見せた。嫌な気持ちにさせちゃうかなって思ってたからオレは救われた気持ちになったけど、よく考えたら、大石のその表情はオレを嫌な気持ちにさせないための気遣いだったかも知れないと思い直した。 そんな大石のことが好きだ。人として好きだ。だけどきっと、オレたちは共通の「好き」では繋がっていない……それに気付いてしまった。それでもやっぱりオレは大石のことは大好きなんだ。これも真実。 さっきの言葉以降、口をつぐんで俯いてしまった大石に向けて「ただ」とオレは言葉を続ける。 「オレと別れたあとの大石が、オレたちがしてたみたいなことを他の人とするのはイヤって思ったし、大石と今みたいに話せなくなっちゃうかもって考えたらすごく悲しい。オレは……もっと大石と色んな思い出増やしていきたいよ」 だから別れたくない。そう伝えた。 大石の顔が見られない。今度はオレが俯いて次の言葉を待つ。間が嫌に長い。自分勝手なことを言っている自覚があるせいか、居づらさもあってなお長く感じている気がする。 どれくらい時が流れたか、大石がふぅと息を吐くのが聞こえて顔を上げた。怒っているか呆れているか、身構えて目線を合わせたその顔は、柔らかく微笑んでいた。 「その気持ちで充分だよ。俺も、これからも英二と居たい」 見慣れた下がり眉の笑顔で、大石はポンと頭に手を乗せてきた。そしてそのとびきり優しい視線を向けたまま頭を撫で続けてくる。 大石は今本当は思いっきりハグしたいのかもしれないとか、キスしたいのかもとか思って、全力で応えられないのが申し訳ない。でもオレが大石の気持ちを受け止めきれないことを申し訳ないって思ってしまったら、きっと大石はオレを好きでいることを申し訳ないって思ってしまう。それは寂しいと思ったから――。 「大石、本当は今キスしたいとか思ってるでしょ」 「えっ」 「わかりやすいんだよなー大石って。いいよ遠慮しなくて」 「だけど、英二……」 「オレがいいって言ってんの」 「……じゃあ」 大石が動いたので、きゅっと目をつむって唇が合わさるのを待つ。でもその瞬間は訪れなくて、背中にふわっと温かさが伝わってきた。 「これだけ」 「……」 「ありがとう、英二」 大石はオレをハグしてきていた。力がこもることもなく、ポンポンと背中が叩かれる。 正直、ホッとした自分がいた。それが悲しかった。 「……グスッ。ごめんね大石」 「お、おい泣くな英二! 俺は大丈夫だから」 「ありがどう〜〜」 涙がどんどん溢れて、それを大石の肩に押し付けるようにして服に吸わせた。 これからもきっと、大石が我慢したり、俺がちょっとだけ無理したり、そういうことがたくさんあると思うんだ。でも、そんな困難も大石となら乗り越えられる。一緒に苦しむなら大石がいい。そう思った。 だってオレたちって恋人同士になる以前に親友で、最高のダブルスパートナーなんだから。そのことを思い出したんだ。 体勢を少し変える。大石の腰に足を回して、首にも腕を掛けてぎゅっと引き寄せた。そう、それは二人で試合に勝利したときのように。大石もそれに気付いたのかどうか、ようやく力強い抱擁が返ってきた。そのまましばらくきつくきつく抱き合っていた。 これからも、どんな困難も、二人で乗り越えていけますように。オレのベストパートナーへ。 |