* 寒くて眩しいカウントダウン *












 急に寒くなったねとマフラーに顔をうずめる君、横で相槌を打つ俺。その相槌は白い薄雲となって二人の間に浮かび上がって、ほどなくして消えた。もやが溶け込んだ方向へ首を持ち上げれば、冬型の高気圧配置宜しく、見事なまでに広がる満天の星空。宙を仰いだまま歩く俺が無意識に緩めた歩調に気付いたか、横から君が問い掛けてくる。
「なんか星座見える?」
「ん、色々あるぞ」
 説明しようと足を止めると、どこどこ、という声がすぐ耳元で聞こえた。振り返れば、同じ角度で見上げようと肩すぐ後ろから覗き込んでくる君。
 どんぐり眼がキラキラと揺れている。
 キラキラと。
「……イルミネーションか」
「へ?」
 気の抜けた声を出した君が、俺の視線の先を追う。
「クリスマスツリーだぁ!」
「もう今月末だもんな、クリスマス」
 その存在に気付いて、瞳は尚キラキラと輝く。
 キラキラ、キラキラと。
 星のことは一旦忘れ、色とりどりの飾り付けを身に纏った駅前の街路樹へと歩を進める。見上げた人工の明かりの眩しさに、星空が少し遠くなって、息が霞むほどの寒さも忘れて。言いたいことは色々あるのに、伝えきれる気もしなくて、次の言葉を思慮していると。
「恋人がいるクリスマス初めて」
 イタズラな笑顔と目が合った。
 それは見慣れた表情にも見えたけれど、そうか、初めてだ。君の瞳と、反射する光をも、こんな立場と距離感で見つめることは。
 これからなのだ。冬の大きなイベントも、君と過ごしていく日々も。
「楽しみだねっ、大石」
「そうだな、英二」
 クリスマスも、それまでの日々も、大切に過ごしたい。キラキラと眩しい横顔を見ながら、こっそりとそう考えた。

























クリスマスまで毎日大菊作品見られるなんてハッピーすぎる〜!の気持ちで
付き合いたての二人を書かせてもらいました。
大菊アドベントカレンダー2022の12/4に寄稿させて頂きました!


2022/12/01-02