「付き合って一年だね」 一年前よりも少し首を上に傾ける必要が出てきたなと感じながら、耳に口を寄せてそう伝える。リョーマは大して興味がなさそうに「だから何?」と返してきた。 「一周年だよ? なんかないの、嬉しいとか、一年前が懐かしいとか」 「……別に」 簡素な返事が返ってきてがっくりと肩を落とす外ない。でも、私だってリョーマがそういう人だってことはわかってる。一年一緒に過ごしてきたんだもの。 始まりは残暑の残る頃。次第に木々は赤く染まっていって、後には雪が降ったこともあった。満開の桜が咲いて、散って、カンカンの日照りとうだるような暑さも身に受けた。その季節を、全部君と過ごした。 「私は嬉しいよ。春も夏も秋も冬も、全部リョーマと一緒に過ごせたってこと」 そう伝えたけど、興味なさそうに「ふーん」としか返ってこない。私だって盛大に祝ってくれとかワガママ言うつもりもないけど、さすがにこれは寂しいじゃん。そう思っていたらリョーマは「別に、」と口を開く。 「これから先、何年も一緒にいるんだから関係ないんじゃない」 ……わかってたよ。リョーマがこういう人だってことくらい。 私を喜ばそうなんていう意図はなさそうなのに、無意識に私を喜ばせちゃう。こんなことできるのは君ぐらいだよ。これからもずっとよろしくね、私の王子様。 |