「いくよ、せーのっ!」 私157.6cm、岳人158.0cm。 「ウソ、抜かれた!?」 「やっりー!」 隣で身体測定結果を握りしめてガッツポーズをする岳人を信じられない表情で睨んでしまう。物心ついた頃から一緒に居て、ずっと見下ろして生きてきたはずの岳人が、確かに最近は目線が近いような気もしていたけど、まさか身長が抜かれてるだなんて。 (信じたくない……) 「でも体重は俺の方が軽いんじゃねーか」 「あっ、バカ返して!」 ひょいっと取り上げられたその紙を取り返そうと腕を伸ばした。ら、体勢を崩してしまった。よろけた私のその体を、岳人は片腕で軽々抱き留めた。「っぶねーな」と漏らす岳人の腕から憎まれ口すら上手く返せず「ごめん」と伝えて抜け出す。 岳人のくせに、チビのくせに、思いのほか力が強いの何それ。チビのくせに、まだ誤差の範囲だけど、数ミリ、もしかしたらこれからもっと、見上げて生きていかなきゃいけないなんて。 (なんだそれ……) 一番許せないのは、そんな岳人ごときに心臓ドキドキしちゃっている自分。 |