* MY HERO! *












 今から十年も前の話。私は小学校入学直前に親の都合でアメリカへ引っ越した。突然放り込まれた現地校。言葉がわからなくて泣いたことも数えきれないし、言葉がわかったらもっと嫌な思いをしたかもってくらい、クラスでただ一人のアジア人だった私は周りから冷たい態度を取られることがあった。
 そんな中、よく話しかけてきてくれる男の子がいた。肌が白くて金髪で目が青くて、幼い私の思う「アメリカ人」にピッタリ合致するような外見をしていた。だけどその子は外見で私を判断するようなことはしなかった。笑顔が印象的で、私を楽しませようとしてくれているのがよく伝わってきた。最後までまともに英語を喋れるようにならなかったけど、アメリカ生活を楽しく終われたのは彼のお陰だったと思う。
 どんな言葉を掛けてくれていたのか、当時理解できなかったから今も思い出せない。ただ一つ、ひょうきんな動きととびきり明るい表情で、必ず私を笑わせてくれる魔法の言葉があったのは憶えてる。
「あぱちょー!」って。
 どういう意味だったのだろう。中学校の英語の授業では習わなかったし、意味は未だにわかっていない。だけど、とても大切な思い出。
 ――そんなことを、なんとなしに点けたテレビで『アメリカ代表』の文字が映し出されたものだから思い出した。どうやらテニスのユースチームみたいだ。
 ああ、元クラスメイトのあの彼は、今頃どこで何をしているのだろう。

























ほぼ実体験。


2022/09/01