* 夏のチカラ *












 青春学園には願いが叶う桜の木があるらしい。実しやかにささやかれる、根も葉もない噂。恋する乙女たちはそんな根拠もない迷信にさえも縋りたくって、その木の下に好きな人を呼び出して告白をするケースが後を絶たないらしい。

 そして今日、私は。


「何、用事って」


 クラスメイトは穏やかな笑顔で現れた。クラス一、いや学年一……もしかしたら学校一モテる人だ。その人物――不二は緊張した面持ちの一つもなく呼び出しに応じてくれた。昇降口前で落ち合った私たちだけれど、「ちょっと移動していい」と問うと静かに頷いた。

 天から突き刺してくるような日差しが眩しい。半袖の白いシャツから覗く腕はかすかに汗ばんでいる。世界は桃色になんて溢れていなくって、木々は青々としていて、目の前に見えるのは大きく咲いた黄色の花。


 人と同じように根も葉もない噂に身を委ねてみるのもいいけど。


「あのね」


 今日、私は、この一本のひまわりの前で。

























サマバレネタで何かさらっと書きたかった。


2022/08/14